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2019年05月29日

ロシア帝国軍から赤軍へ~将校たちの行方~

一般向け文化講座「はこだてベリョースカクラブ」の今年度第1回目の講話内容です。

テーマ:ロシア帝国軍から赤軍へ~将校たちの行方~
講 師:デルカーチ・フョードル(副校長)

 皆さんは、「勝利勲章」と呼ばれるものをご存知でしょうか。これは、ソ連における軍人に対する最高殊勲勲章です。戦争の流れを変えた指導者たちに与えられました。与えられたのは16人だけです。そのほとんどが、ロシア帝国軍出身の軍人です。有名な人は、ゲオルギー・ジューコフ、アレクサンドル・ワシレフスキー、イワン・コーネフ、レオニード・ゴーボロフが挙げられます。
 勝利勲章は受賞していませんが、大変人気で有名な軍人がいます。それは、セミョーン・ブジョンヌイという人です。立派な髭がトレードマークで、この時代に、そしてロシア人としては、大変長生きで、三度もソ連邦英雄の称号を受けた人物です。伝説の男と呼ばれています。
 さて、今回のテーマですが、「ロシア帝国軍から赤軍へ~将校たちの行方~」ということで、ロシア国内で起こった内戦の話からはじめます。
 今年は、戊辰戦争終結150周年の年ですね。これは日本の内戦で、日本人同士が色んな気持ちを持って戦った歴史です。ロシアでも同じようなことがありました。1917年ロシア革命が起きた年、ロシアは真っ二つに分かれてしまいました。
 当時、第一次世界大戦中でした。当時、将校には現役将校と戦時将校があり、現役将校というのは、もともと身分の高い人達です。そして戦争時将校というのは、農民が多くいわゆる一般人です。身分の高い人たちが、農民出の人たちと「将校」ということで一括りにされるのを嫌いました。現役将校は戦死する人が多く、生き残っている人は少なかったため、数は戦争時将校のほうが勝っていました。
 さらに次の作戦のため、ペテルブルクには将校のほか、兵士たちが多く集まりました。街には人があふれました。そうなると物資は不足し、また不衛生な環境にもなりました。これによって不満はいっそう大きくなり、革命が起こることへと繋がったのです。
 革命以後、それまでにあった赤衛隊を基に「赤軍」が設立されました。この赤軍は、志願兵によって構成され、階級もなくなり、将校は投票で決めることとなりました。兵士たちは、自分たちを指揮する人を自分たちで選んだのです。
 赤軍に対し、共和主義者や君主主義者や保守派などのメンバーで構成された軍隊を白軍と呼びます。この赤軍と白軍の戦争は、完全な内戦です。1917年から1922年にかけて起こりました。
 しかし、内戦で兵士たちが徐々に思うようになったことは「同じ国の人間を殺し合う戦争は嫌だ!」ということでした。結果的に、赤軍のまとまりに白軍は敵わず、赤軍が勝利しました。
 その後の赤軍で活躍した将校に、アンドレイ・ヴラソフという人がいます。彼は、対ドイツとのモスクワ防衛線で、活躍してレーニン勲章を受章しました。立派な司令官でしたが、ドイツの捕虜になってしまいました。軍人として仕事ができることはドイツ軍も理解していたので、収容所では生活の質は保証され、ドイツ軍側になるようスカウトされました。彼は投降して、対ドイツ協力者になりロシア解放軍総司令官となりました。しかし最後は、ソ連に逮捕され絞首刑です。
 良い司令官ではありましたが、その選択がどうその先の人生に影響を及ぼすのかは判断できないですね。
 この時代背景はやこれらの人々の行方はロシアの文学にも影響を与えています。ミハイル・ブルガーコフの『БЕГ(逃亡)』という作品や、アルクセイ・トルストイの『苦悩の中を行く』という作品は映像化もされていますので、興味のある方は見ると良いでしょう。


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日本にいながらロシアの大学へ!ロシア極東連邦総合大学函館校
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2019年05月07日

2019年極東大学オリジナルカレンダー 5月は??

 <5月>スーズダリ

 昨年スーズダリを訪れた時に撮った写真です。モスクワから北東に約200キロ、中世の街並みを今に残すことで有名なスーズダリは「黄金の環」の町のひとつで、ユネスコの世界遺産にも登録されています。この町に足を運ぶ動機となったのは、モスクワやペテルブルグでは目にすることの出来ないロシアを見たいという単純な好奇心でした。
 そして町は想像以上の美しさでした。中でも感銘を受けたのは、川越しに見るスーズダリの様々な景色です。町を縫うように流れる川沿いにはヤギやウシが放牧され、さらに町の奥に進むと、修道院を囲む強固な城壁が川の土手の上にそびえ立っています。丘に登れば、川の向こうにクレムリンや教会が見えます。その教会の白い壁や瑠璃色の屋根が、穏やかなロシアの田舎風景に映え、思わず見惚れてしまうほどの美しさでした。私がスーズダリで感じたロシアを、写真を通して少しでも感じていただければ嬉しいです。

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