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2017年03月17日

ペテルブルク・モスクワ旅行記4

<4日目>
 4日目にしてようやくインターンシップらしく企業訪問が始まった。この日はサンクトペテルブルク郊外にある世界最大のタバコ工場、JTIペトロ工場の見学である。送迎車で工場へ向かい、会議室で概要説明を受けた後、タバコの葉が紙巻きタバコになり、箱詰めされるまでのすべての工程を見せていただいた。終了後に工場内のカフェテリアでランチをご馳走になった。ロシア料理をベースにして、スープやパン、メインディッシュなど好きなものを組み合わせられるようになっていて、多くの職員でにぎわっている。仕事の合間のリラックスしたひと時だ。
 工場の入り口にはロシアの国旗、JTI(JTインターナショナル)の社旗に加えて日本の国旗も掲げられているのが印象的であった。

 

 工場見学の後はエルミタージュ美術館へ向かう。3日いても飽きないと思うが、我々に与えられた時間は90分。一般の入口は中国人団体客がバス何台もで乗りつけるためごった返しているが、私たちは専用ガイドをつけてもらうため、別な入口から入ることができた。しかしビジネススーツを着た4人組は、韓国総領事館の訪問団と間違われてしまった。“Я японка(私は日本人)!と叫んで、ようやくガイドのマリーナさんと落ち合うことができた。

 マリーナさんはとても上品な年配の女性だった。ロシア語で案内してもらう。時間が90分しかないことを告げると、「大丈夫、まず何を見たい?」と聞くので、一番見たかった「ラファエロの回廊」と答え、イタリア美術の一角に連れて行ってもらう。

   

 エルミタージュは建物自体が美術品であり、どこをみても豪奢な装飾、その上世界の名画がこれでもか!と飾ってある。時間がないのが本当に悔やまれるが、マリーナさんは「大丈夫、私たちは慣れているから心配ない、大事なものは全部見せる」と言って、効率よく見せてくれたのでとても助かった。ダ・ヴィンチの聖母もダナエもからくりの金時計も、見たいものは見ることができた。

 エルミタージュ美術館では昔から地下や屋根裏でネズミ取り用の猫を飼っていて、それが「エルミタージュの猫」として有名である。猫は大切な職員の一員。前庭で見かけたこの黒猫も「エルミタージュの猫」であろうか。ロシア人は黒猫を不吉なものとして極端に嫌うが、そんなことお構いなしに悠々と芝生の上を歩いていた。

 

 そこから地下鉄に乗り、今度はサンクトペテルブルク日本センターへと向かう。しかし私たちは地下鉄の駅を出てから、道に迷ってしまった。
 ロシアの地下鉄は日本と違い、出入り口が1か所しかないので間違うはずがない、と過信していた。だが地図のとおりに歩いたつもりでも何か違う。わからない時は誰かに聞くに限る。ロシア人は笑わないというけれど、どこでも誰でも急いでいても、とにかく親切に道を教えてくれた。
 それでもまだ日本センターにはたどり着かない。結局センターに電話して、職員の方に通りまで迎えに来てもらう始末。

 日本センターでは現地でロシア人向けに開いている日本語や日本文化を広める活動について、またペテルブルクに進出している企業の話などを聞くことができた。
 この日の予定はこれで終了だが、帰りにまた迷われてはかなわないと、所長さんが職員のエレーナさんに、そのまま帰っていいから通りまで送るよう指示してくれた。エレーナさんは日本語を勉強中で、東京の日本語学校に1ヵ月留学したことがあるそうだ。まだまだ勉強中と言いながら、一生懸命話をしてくれた。
 今回の旅では旅行会社からペテルブルクで使える「ジェトン」というメトロコイン(1枚35ルーブル)を5枚もらっていた。帰りに使う分と記念に1枚手元に残してもまだ余るので、みんなでエレーナさんにささやかなお礼としてジェトンをプレゼントして、ネフスキー大通りで別れた。

 通りを歩いていると京都・福寿園のカフェを発見。日本センターの所長さんからも話は聞いていたが、今は日本茶がブームで、このカフェも流行っているそうだ。今回の旅で驚いたことに、訪問先で「お茶がいいか、コーヒーがいいか?」と聞かれ、お茶と返すと「紅茶か、緑茶か?」と聞かれることが多かった。ロシア=紅茶と思い込んでいたのでびっくりだ。そのくらい、緑茶が浸透しているという実感があった。

 

 学生たちと一緒に、この前とは別の“Чайная Ложка(チャイナヤ・ローシカ=ティー・スプーン)で夕食。ほうれん草のブリヌィとブロッコリーのポタージュを注文する。店員が不安に思ったのか、スープ鍋のフタを開けて「こんなのだけどいいのか?」と確認してくる。大丈夫。学生たちは初めてなので、それぞれがんばってロシア語を使って、好みのブリヌィと飲み物を注文していた。

 そして今夜でペテルブルクともお別れ。モスクワ駅から豪華寝台列車КРАСНАЯ СТРЕЛА(赤い矢号)に一晩乗ってモスクワへ。ロシアの駅は向かう先が駅名になっていることが多い。
 日本ではもう寝台列車は走っていないので非常に楽しみにしていた。駅は暗くて、案内板も一つしかないので、気をつけていないとどの列車に乗るかわかりづらい。

 
 
 豪華列車らしく、各車両の搭乗口の前には制服に身を包んだ屈強なおばちゃん!が直立していて、近づくと「パスポート!」と言われる。予約と照合し、確認ができれば中に入ることができる。

 


 赤を基調とした車内、刺繍がほどこされたカーテン、テーブルには箱に入った水のボトルやパン、ケーキが人数分セットされている。とても素敵!

    

でも私は驚いた。4人用のコンパートメントは廊下に対してはドアがあり、鍵もかかるが、コンパートメント内の各寝台はカーテンすらない。男子学生と一緒でこれでは着替えもままならない。出発前にホテルのトイレ(朝のうちにチェックアウトしているので部屋には入れない)でスーツから着替えておいて本当によかった。今回は学生たちと同じ部屋だけれど、見知らぬ人と一緒だとちょっと怖いかな、それとも旅は道連れで楽しいのかな。

 

 23時55分にモスクワに向けて出発、約8時間の列車の旅が始まる。ペテルブルクの夜は雨で気温12℃。とても8月とは思えない寒さだったけれど、街は落ち着いていて美しくて、悪い印象は一つもない。また来たいな。まだまだ見たいものはたくさんある。
 そして明日の朝はモスクワ、今度はどんな出来事が待っているだろうか。

                 

ロシア極東連邦総合大学函館校 事務局 大 渡 涼 子


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2017年03月14日

盛岡出身の卒業生 三好さんからいただいた「ロシアビスケット」

 戦前の函館には、様々なロシア人が暮らしていました。20世紀初頭には、「旧教徒」と呼ばれる人たちが、自己の信仰を守りながら自給自足的な暮らしを函館郊外で営んでおり、またロシア革命後は白系ロシア人が定住し始め、さらに1925年から45年までの約20年間は、ソ連領事館関係者(ソ連国籍者)も暮らしていました。
 当時の新聞から、旧教徒が「ブラーガ酒」という自家製の蜂蜜酒を日本人に販売したことがわかっています。また、白系ロシア人が作った麺麭(ロシアパン)やジャムの美味しさは、今なお函館の人たちの記憶に残っています。
 「ロシアケーキ」のように、ロシア人の菓子職人を通して、各地に広がっていった洋菓子もあれば、ロシアの永久凍土をイメージして日本人職人が作ったと言われている(諸説あり)「シベリア」(羊羹をカステラで挟んだ菓子)のように、パン屋でよく見かけた和菓子風の菓子もあります。
 今回ご紹介する「ロシアビスケット」は、「盛岡正食普及会」で製造販売しています。

 「ロシア」と名の付くものには何でも興味を持つ我々としては、思わず盛岡出身の4年生の三好さんに、「ロシアビスケット」ってどんなお菓子?と聞いてみたのです。すると三好さんは、就職活動で地元に帰省した際にお店に立ち寄り、「クルミ」と「クルミ・レーズン」の2種類を学校へのお土産として買って来てくれたのです。
 三好さんがお店の方から聞いてきた話しによると、「ロシアビスケット」の考案者は、シベリア抑留者だそうです。ビスケットの包装には、「原材料名 岩手県産の小麦粉、粗製糖、クルミ、添加物の入らないマーガリン、卵、小麦胚芽」、とありますが、シベリアから無事生還した考案の方は、「ロシアビスケット」にどのような思いを込めたのでしょうか。
 店舗となっている建物もなかなか素敵だったと聞き、調べてみたところ、盛岡市ホームページに「旧井弥商店(現盛岡正食普及会)」盛岡市指定保存建造物に挙げられていました。
 ぜひ一度訪れてみたいものです。
 

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2017年03月08日

3月8日は国際女性デー

 ロシアの女性にとって一番大切な日、それは自分の誕生日と3月8日の国際女性デー"Международный женский день”です。いつも以上に男性が女性を大切に扱い、花を送り、この日だけは家事も男性が行ってくれます。ウラジオストクでもお花屋さんにはチューリップの花があふれているそうですよ。

 ロシアは休日ですが、函館校では誰からともなくお菓子や果物を持ち寄り、自然とパーティーが始まりました。

 この日は女性にプレゼントを贈る日でもあり、私たち職員もアイーダ先生からめずらしいカザフスタンの紅茶(写真中央の赤い箱)などをいただきました。

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2017年03月01日

2017年極東大学オリジナルカレンダー 3月は?

<3月>アレクサンドル・ネフスキー大修道院(サンクトペテルブルク)

 サンクトペテルブルクのメインストリート、ネフスキー大通りの東の終点、ネヴァ川のたもとにあるのがアレクサンドル・ネフスキー大修道院です。ロシアの聖人でもあるアレクサンドル・ネフスキー(ネヴァ川のアレクサンドル)公を祀るため、1710年ピョートル大帝によって創立されました。
 右下の写真、建物がつなぎ目から2色に分かれており、向かって右側の黄色い壁がトロイツキー聖堂、左の赤色の建物が修道院では最も古い建築のブラゴヴェシチェンスカヤ教会です。正教会を象徴する鐘が旅情を掻き立てます。

 前庭にはイコンや乳香などを売るキオスクがあり、人懐こい猫たちがのんびりと歩いています。多くの信者に敬われ守られている、そんな静謐な時が流れる修道院です。

 2017極東大学オリジナルカレンダーは「はこだてロシアまつり」でも販売し、大変好評でしたが、まだ若干在庫がございます。
 事務局にて1部500円で販売しているほか、遠方の方には郵送料込み600円で頒布します。ご要望にお応えして切手での支払いができるようになりましたので、ご希望の方は事務局までお問い合わせください。

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