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2012年12月27日

2012年のこと

 毎年、暮れにはこの1年のことを振り返ります。今年はあまり大きな出来事はなかったけれども、こうして見ると日々、様々なことをしてきたと思います。

 今年印象に残った出来事と言えば、9月にあったロシア正教会最高指導者・キリル総主教の来函でしょう。日本に正教を広めた聖ニコライ永眠100年の記念式典と、東日本大震災で甚大な被害を受けた東北地方で祈祷を捧げるための来日でした。函館に滞在したのはわずか4時間ほどでしたが、聖ニコライの足跡をたどるという意味で、総主教はクラスノヤルスクから専用機でまず函館に入り、それから東京へと向かいました。私たちは信徒ではありませんが、ロシア語を学ぶ者として特別に函館ハリストス正教会の中に入れていただき、祈祷の場に立ち会うことができました。とても荘厳な空間でしたが、人々が平和と家族の無事を祈る気持ちは、聖ニコライが来日し祈りを捧げた150年以上前と同じでしょう。
 当日のハリストス正教会には総主教がここにいることを示す緑色の旗が、日ロ両国旗とともに掲げられていました。後ろに見えるのはフランス人司祭が開いた元町カトリック教会、その向こうに函館の街が広がっています。極東大学のあるここ元町には、ロシア、フランス、アメリカ、イギリスの教会、そして日本の寺院がひしめいています。このように宗派が違う教会が並びあっている場所は、世界的にもめずらしいのだそうですが、この辺りは江戸時代の開港の時からそういう場所なのです。

 もう一つ、今年の出来事で思い出すのは、「森は海の恋人運動で知られる畠山重篤さんをお招きして、講演会を開いたことです。市内各団体のご協力を仰ぎながら、7月のロシアまつりの時に開催することができました。
 気仙沼市でカキの養殖を生業としながら20年以上も前から、森や海の環境保全に取り組んでいる畠山さん。東日本大震災で養殖場は壊滅的な被害を受け、身内を失いながらも再び立ち上がり、精力的に養殖の仕事も「森は海の恋人運動」も進めておられます。
 どうして極東大学が畠山さんのようなすごい方を呼ぶことができたのか?とよく聞かれましたが、畠山さんの書いた児童書「カキじいさんとしげぼう」のロシア語版を作る際の翻訳を、本校のグラチェンコフ・アンドレイ教授が担当したご縁で、と答えてきました。ではなぜ、翻訳の依頼がうちに来たのか、と問われれば、ご本人は照れるかと思い、あまり公にしませんでしたが、重篤さんの弟・重人さんが今年3月に函館校のロシア語科を卒業した学生だったからです。定年退職後に函館で一人暮らしをしながら立派に勉学に励まれ、若い学生たちや教職員からも慕われました。仙台に戻った今も、ロシア語の勉強を続けているそうです。
 講演会には大変な反響がありました。世界中の人々に森や海の大切さ、循環の仕組みを知ってもらいたいという畠山さんのわかりやすく愛のあるお話、そして恐ろしい震災の現実も冷静に受け止め、ひょうひょうと語られる姿に会場はすっかり魅了され、終了後に行った著書の販売は急遽サイン会となり、行列ができました。

 本当は講演会までにロシア語版が完成するといいな、と思っていたのですが、当日には間に合いませんでした。編集作業の遅れと、畠山さんがフランスを訪れることになり、先にフランス語版を作ることにしたため、と聞いています。畠山さんの養殖場と「森は海の恋人運動」は、かのルイ・ヴィトン社の支援を受けており、「カキじいさんとしげぼう」の各国語版の出版に関してもその援助がされています。「カキじいさん―」は未来をになう子どもたちに読んでもらうために、これからも韓国語やポルトガル語など、さまざまな国の言葉に翻訳される予定だそうです。
 ところで、遅れていた「カキじいさんとしげぼう」のロシア語版、“Дед Устрица и Сигэбо” がようやく完成し、私たちの手元に届きました。ちょっと遅いクリスマスプレゼントのようで、とても大切な贈り物となりました。今までに日本語・英語・フランス語版が出版されていますが、手にしたロシア語版はキリル文字のせいか、とても重厚な感じがする、素敵な仕上がりとなりました。文字の持つ力でしょう。日本の海につながるアムール川流域の、そしてロシア全土の子どもたちにもこのメッセージが届くように、というのが畠山さんの願いです。

 こういう活動を見ていると、日ごろは日本がどうとか、ロシアがどうだとか言ってはいますが、海や空に目に見える線が引いてある訳でもなく、狭い地球、どこもつながっているのだとつくづく感じます。
極東大学もまだまだいろいろな可能性がある大学にすべく、みなさまのご協力をいただきながら日々の仕事を積み重ねていきたいと思います。来年もどうぞよろしくお願いします。

ロシア極東連邦総合大学函館校

事務局  大 渡 涼 子

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ネイティブのロシア人教授陣より生きたロシア語と
ロシアの文化,歴史,経済,政治などを学ぶ、日本で唯一のロシアの大学の分校です。

2012年12月26日

2013ロシアンホットバザールのご案内

 
 1月19日(土)、20日(日)の二日間、極東大学と財団法人 北海道国際交流センター(HIF)、函館日ロ親善協会などが共同でイベントを開催します。極東大学とHIFは同じ建物内にあり、普段から協力関係にありますが、一緒にイベントを開催するのは初の試みです。“ロシアと言えば”の極東大学と、“世界を相手に国際交流と言えば”のHIFが強力なタッグを組みます。
 親子で参加できる料理教室やマトリョーシカづくり、年代を問わず愛される映画、コンサートなど楽しい催しがいっぱいです。
 さらに極東大学への入学を検討している方、少しでも興味のある方のために、スタッフがお答えする進学相談会やロシア語会話のクラスも実施します。
 いつものロシアまつりとは違った、冬のイベントならではの“心もからだも温まる”プログラムでみなさまのお越しをお待ちしております。

2013ロシアンホットバザール

日時:2013年1月19日(土)、20日(日)
   11:00~15:00

場所:ロシア極東連邦総合大学函館校(函館市元町14-1)
   *駐車場に限りがありますので、公共交通でお越しください。

主催:2013ロシアンホットバザール実行委員会
     財団法人 北海道国際交流センター
     ロシア極東連邦総合大学函館校
     函館日ロ親善協会

協力:在札幌ロシア連邦総領事館函館事務所

内容:
<1日目>
   11:00~12:40 ロシア映画「両棲人間」
              悲恋を描くSFファンタジー・1961年作
               500円・要申込み

   11:30~12:30 ロシア料理教室「ペリメニ」
              ロシア餃子を作ります。お持ち帰りもできます。
               限定20名 500円・要申込み

   13:00~13:30 ロシア語で話そう「ロシア語会話」
               限定10名 無料・要申込み

   14:00~15:00 ロシア民謡コンサート
              引地桂子さん(ソプラノ)、高橋セリカさん(ピアノ)
               無料・申込み不要

<2日目>
   11:00~12:30 ロシア映画「海賊20世紀」
              70年代のソ連で人気を博したアクション映画
               500円・要申込み

   11:00~12:00 羊毛を使ってマトリョーシカづくり
              フェルトを針で刺して、小さなマトリョーシカの
              マスコットを作ります。
               限定10名 500円・要申込み

   13:00~13:30 ロシア語で話そう「ロシア語会話」
               限定10名 無料・要申込み

   14:00~14:30 函館童謡の会プチコンサート「ロシアの合唱曲」
               無料・申込み不要

   14:30~15:00 エコールドバレエ・マユミ教室によるロシアバレエ
              「チャイコフスキー作 くるみ割り人形・眠れる森の
              美女/小作品」ほか 
               無料・申込み不要

   終日       ロシア料理を食べよう!手作りボルシチの販売

<2日間とも・11:00~15:00、申込み不要>
   ロシア雑貨販売
   ロシア極東大学進学相談会
   ロシア語で書こう「ネームカードづくり」
   日露2か国語でのDVD上映
   「実行寺の小坊主・とっ珍さんはおおいそがし」
   ロシアンカフェ(ピロシキ・ロシアンティ・オレンジジュース)
     

*人数限定や事前申し込みが必要なものもありますのでご注意ください。
  空きがある場合は当日でも受け付けます。

*詳細は案内チラシをご覧ください。
 お申し込みの場合はチラシをプリントアウトして申込書をFAXするか、メール、電話にて下記まで必要事項をお知らせください。

≪お申込み・お問い合わせ≫
2013ロシアンホットバザール実行委員会
 
   財団法人 北海道国際交流センター内
    TEL:0138-22-0770 FAX:0138-22-0660
    E-mail:info@hif.or.jp

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2012年12月20日

「北方領土を知るつどい」のご案内

 社団法人北方領土復帰期成同盟渡島地方支部主催による勉強会が、下記のとおり開催されます。

日 時:平成24年12月22日(土) 14:00~15:00

場 所:サン・リフレ函館 中会議室
      函館市大森町2-14

内 容:渡島地方支部北方領土返還要求運動の報告

     講演「資料・史跡からたどる函館とロシア210年の交流史」
     講師 函館日ロ交流史研究会
          世話人 倉 田 有 佳 氏(本校非常勤講師)
 
     ほか

参 加:無料

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2012年12月13日

日本語講師デビュー

 今年3月に函館校を卒業し、10月からウラジオストク本学で日本語講師として働き始めた小早川眸さんから便りが届きました。今後もときどき日本語講師として奮闘する姿やウラジオストクの生の様子を伝えてもらいますので、どうぞお楽しみに!

*  *  *  *  *

 こんにちは!卒業生の小早川です。
 極東大学を卒業して早9カ月(現在)、ロシアに来て2カ月が過ぎようとしている今日この頃。そう、私は今、ウラジオストクにいます。
 ウラジオストクで何をしているかといいますと、極東連邦総合大学本学の東洋学部日本語学科の新米教師として働いています。カッコよく言えば、大学の先生をしています。
 どんな風かと聞かれれば、新米ゆえに右も左もわからず、フレッシュで刺激的で緊張感のある日々が続いております。私を除く教師陣は、日本語教師歴ウン年のベテランの方々ばかり。学生のレベルも教材選びもわからない私に、どんな小さなことにも丁寧で適切な助言をしてくださいます。本当に助けてもらっています。
 例えば、いつも悩んでいることですが、「こんな授業がしたい」「こんなことしたい!」なんて理想的な授業のイメージがあったとしましょう!続く質問は、それをどうやって授業に盛り込もうか?見せ方や出し方はどうするか?教えるのは何か、教えたいのは何か?質問の出し方は目的によって変わってきます。
 さらに!どんな風に教えるのか?たとえば、ペアワークにするのか、グループワークにするのか?はたまた一問一答にするのか?答えさせないで練習問題にして書かせることだってできます。授業をどう面白くするか、わからないことを少なくするためにはどうすればいいか…。などなど、もう考えれば考えるほど選択肢も増えてきて、その中から選ばなければなりません。先生として勉強しなければいけないこともたくさんあるので、頭の中は忙しいです(笑)
 でもそれは私にとってすごく楽しいことなんですよ!そして今の私の担当は1年生3クラス(1クラス10人程度、3クラスで30人弱? ?)を教えています。
 そうです1年生!い・ろ・はの「い」すら知らない1年生を教えているんです!ひと月前に彼らはひらがな、カタカナを覚えたばかり。私のクラスはとりわけ会話を中心に教えるのですが、なんと言っても日本語で説明しようにも、彼らは日本語の初心者です。
 私のロシア語で文法なんぞ説明できるわけがありませんので、だいたいは日本語で教えています。理解しているかどうか、ちょっとそこが心配です。ここは難しい所ですが…とりあえずは、「習うより慣れろ」というスタンスで様子を見ています。
 ちなみに次は「どこどこへ何番のバスで行きます」のフレーズを使う授業です。簡単にいえば、行き先と手段が伝えられればオッケーなんです!学生たちにはウラジオストク市内のバスの案内プロフェッショナルになってもらおうと考えています。市内の様々な場所からいろいろな所へバスで行ってもらうシミュレーションが出来たら実用的でいいですよね。
 旅行のガイドとして働く学生も多いと聞くので、将来必ず使えるフレーズになると信じています (ちなみにウラジオストクのバスは番号によって運行ルートが違います)。
 さて、このネタをどうやって膨らませていくか、明日はそれを考える日になりそうです。こんな感じで先生をやっています。一歩一歩ですが、授業についていつも考えつつ、良い先生を目指しています!


極東連邦総合大学 日本語講師 小早川 眸

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