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2010年01月29日

ロシアの缶詰

 サハリンの缶詰をいただきました。サケマスのラグー(煮込み)やコンブのイカのサラダなど、中身は様々です。


 これが米原万里さんの著書で有名な“ЗАВТРАК ТУРИСТА”、「旅行者の朝食」です。この缶は魚ベース。非常にまずいものとして書かれていますが、値段が安いので、ソ連時代に学生だったうちの先生方も、この缶詰にはずいぶん助けられたとか。今となっては懐かしいもののようです。


 そしてこれはなんと、イソギンチャクの缶詰!
 トマトソースで、コンブと野菜が入っていると書いてあります。イソギンチャクなんて、どんな味なのか想像もつかないと思って先生に聞いてみたら、「ナマコと一緒ですよ」と言われました。
 そう言えば中国では、かつてウラジオストクのことをハイシェンウェイ、“ナマコの入江”と呼んだとか。ロシア人はナマコを焼いたり、サリャンカ(スープ)にして食べるそうです。

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日本にいながらロシアの大学へ!ロシア極東連邦総合大学函館校
ネイティブのロシア人教授陣より生きたロシア語と
ロシアの文化,歴史,経済,政治などを学ぶ、日本で唯一のロシアの大学の分校です。

2010年01月18日

ミリオン・ズビョースト 第62号

 函館校の学報であり、函館日ロ親善協会の会報である ミリオン・ズビョースト/百万の星 第62号を函館校のページに掲載しました。

 今回の巻頭言は、デルカーチ・フョードル講師による「調子どう、ロシア?」です。2009年、ロシアで起こった様々な事件や現象について、デルカーチ先生がロシア人ならではの視点で振り返ります。アネクドート・オブ・ザ・イヤーのおまけ付きです。

 学生からの投稿では、ロシア語科2年の松山泰慶さんが、3ヵ月間のウラジオストク留学について、感想を綴ってくれました。
 また、今号からの新企画として、ロシア料理のレシピを紹介していきます。第1回目は「アニケーエフ家風ボルシチ」。アニケーエフ副校長の作るボルシチは最高です!是非ご一読ください。

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2010年01月12日

ある詩人の生涯

 一般向け文化講座「はこだてベリョースカクラブ」の今年度第6回目の講話内容です。

テーマ:「ある詩人の生涯」
講 師:鳥飼やよい(本校准教授)

 ブーラット・シャルボービッチ・オクジャワ(Булат Шалвович Окуджава 1924年5月9日-1997年6月12日)は、ソビエト・ロシアの歌手、詩人であり、作曲家、作家、シナリオライターでもあります。60年から80年代を中心に約200曲の自作の歌を歌い、ソビエトにおけるシンガーソングライター(Бард = バルド)の先駆けとなります。全ロシアでその歌を知らぬ人のないほどの大きな人気を得て、ロシアを代表する歌手となりました。

 オクジャワはグルジア人の父とアルメニア人の母の間にモスクワで生まれました。父親はスターリンに銃殺され、さらに母親も収容所に入れられたため、幼少時代はグルジアの祖母の下で過ごしました。17歳で志願兵として戦場へ赴きますが、負傷のためグルジアの首都トビリシに復員し、それから大学を終えて小学校の教員となります。
 教職につくかたわら、もともと詩作に関心があった彼は、自分の詩にメロディをつけ友人たちの集まりで自作自演をしていたところ、評判が口コミで広がり、徐々に全国にその名が知れ渡っていったのです。

 「バルド」とは、中世の宮廷や貴族に雇われた職業的詩人または吟遊詩人のことです。オクジャワは政治や思想とは関係のないソビエトの人々の生身の生活の実感を歌い、歌手でありながら特に歌詞を大事にしました。そのため、シンガーソングライターではなく「バルド」の呼び名を与えられ、続いて現れた世代の歌手たちの演奏スタイルにも大きな影響を与えました。

 シンプルなメロディに言葉をたっぷりとのせて歌うオクジャワの歌には、何ともいえない暖か味と人間臭さがあります。しかし本人は、歌は下手で楽譜も読めないとして、「自分は歌手ではなく詩人である」と言っています。このせいか、彼の歌を聞いた多くの人々が自分にも歌えるのではないか、とギターをとり歌い始めたのでした。このことも、オクジャワの歌が多くの人々に歌い聞かれていった理由の一つでした。

 日本の山之内重美さんもオクジャワの歌を歌っていますので、CDで聞き比べてみましょう。山之内さんの訳詩は、彼女自身が行っています。

* 講話では、実際に歌うオクジャワの姿をYouTubeで観ながら、1曲ずつ解説しました。

1.Грузинская Песня グルジアの歌

Виноградную косточку в теплую землю зарою,
暖かな大地にブドウの種を埋めよう
И лозу поцелую, и спелые гроздья сорву,  
そして蔦に口づけをし、熟れた房をもぎ取ろう
И друзей созову, на любовь своё сердце настрою...  
それから友を呼ぼう、心に愛を湛えよう
А иначе зачем на земле этой вечной живу?  
それなしにこの永遠の地に生きる甲斐があるだろうか?

Собирайтесь-ка, гости мои, на моё угощенье,  
客人達よ、どうか私の馳走を受け取って欲しい
Говорите мне прямо в лицо, кем пред вами слыву,  
そして面と向かって私がどんな人間か語って欲しい
Царь небесный пошлёт мне прощение за прегрешенья... 
天の神は私の罪の赦しを送って下さるから
А иначе зачем на земле этой вечной живу?  
さもなくば、この永遠の地に生きる甲斐があるだろうか?

В тёмно-красном своём будет петь для меня моя Дали,  
暗赤色のドレスを身につけダーリは私のために歌う
В чёрно-белом своём преклоню перед нею главу,  
私は白と黒を身につけ、その前に頭を垂れ
И заслушаюсь я, и умру от любви и печали...  
その歌に耳を傾け、彼女への愛と哀しみで死んでもいい
А иначе зачем на земле этой вечной живу?  
それでなくて、この永遠の地に生きる甲斐があるだろうか?

И когда заклубится закат, по углам залетая,  
朝日が隅々に光を射し始めると
Пусть опять и опять предо мной проплывут наяву  
何度も何度も私の目の前に現れてきますように、
Cиний буйвол, и белый орёл, и форель золотая...  
青い水牛、白い鷲、金色のニジマスが
А иначе зачем на земле этой вечной живу?  
さもなくば、この永遠の大地に生まれきた甲斐があるだろうか?


2.Песенка об Арбате アルバートの歌

Ты течёшь, как река. Странное название!  
君は川のように流れる。奇妙な名前!
И прозрачен асфальт, как в реке вода.  
アスファルトは透明で、川の水のよう
Ах, Арбат, мой Арбат, ты - моё призвание,  
ああアルバート、私のアルバート、君は私の運命
Ты - и радость моя, и моя беда.      
私の喜び、私の不幸

Пешеходы твои - люди не великие,  
ここを通るのは普通の人たち
Каблуками стучат - по делам спешат.  
靴音高く、忙しく歩き去る
Ах, Арбат, мой Арбат, ты - моя религия,  
ああアルバート、私のアルバート、君は私の宗教
Мостовые твои подо мной лежат.    
その舗道に私は立つ

От любови твоей вовсе не излечишься,  
君への愛は治らない病気と同じ
Сорок тысяч других мостовых любя,   
4万のほかの通りもいいけれど、
Ах, Арбат, мой Арбат, ты - моё отечество, 
ああアルバート、私のアルバート、君は私の故郷
Никогда до конца не пройти тебя!      
終わりまで行きつくことは出来ない


3.Синий троллейбус 青いトロリーバス

Когда мне невмочь пересилить беду,   
苦しみに負けそうなときに
Когда подступает отчаянье,       
絶望が迫ってくるときに
Я в синий троллейбус сажусь на ходу,   
私は青いトロリーバスに飛び乗る
В последний, случайный.        
最終の、通りがかりの
Полночный троллейбус, по улицам мчи, 
真夜中のトロリーバスよ、通りを走り抜けろ
Верши по бульварам круженье,     
環状道路をぐるりと回れ
Чтоб всех подобрать, потерпевших в ночи  
夜の事故の犠牲者たちを拾いあげるために
Крушенье, крушенье!          
夜の事故の

Полночный троллейбус, мне дверь отвори!  
真夜中のトロリーバスよ、扉を開けてくれ
Я знаю, как в зябкую полночь       
凍える真夜中に
Твои пассажиры - матросы твои –     
お前の乗客は、お前の水夫となって
Приходят на помощь.          
救いに来てくれる
Я с ними не раз уходил от беды,      
私も幾度も彼らに助けられた
Я к ним прикасался плечами...       
私は彼らの肩に凭れかかった
Как много, представьте себе, доброты 
どれほどの優しさがあることか
В молчанье, в молчанье.         
その沈黙の中に、沈黙の中に

Полночный троллейбус плывёт по Москве,  
真夜中のトロリーバスはモスクワを泳ぐ
Москва, как река, затухает...        
やがてモスクワにも川のように朝がやってくると
И боль, что скворчонком стучала в виске,  
小鳥がついばむようなこめかみの痛みは
Стихает, стихает.             
鎮まっていく、鎮まっていく


4.Давайте восклицать 歓喜の声を上げよう

Давайте восклицать, друг другом восхищаться.  
歓喜の声を上げよう、お互いに感嘆し合おう
Высокопарных слов не стоит опасаться.   
大げさな言葉でも遠慮することはない
Давайте говорить друг другу комплименты –  
お互いを褒め合おう
Ведь это всё любви счастливые моменты.  
これは愛の幸福の瞬間なのだから

Давайте горевать и плакать откровенно  
おおっぴらに嘆き悲しみ、泣こう
То вместе, то поврозь, а то попеременно.  
一緒に、別々に、あるいはかわるがわるに、
Не надо придавать значения злословью,  
中傷の言葉に意味を付け加えることはない
Поскольку грусть всегда соседствует с любовью. 
悲しみのそばには常に愛があるのだから

Давайте понимать друг друга с полуслова,  
ほんの一言聞いただけでお互いを理解し合おう
Чтоб, ошибившись раз, не ошибиться снова.  
一度過ちを犯したのなら、二度と過ちをしないように
Давайте жить во всём друг другу потакая  
お互いに全てを大目に見ながら暮そう
Тем более что жизнь короткая такая.  
人生は短いのだから、なおさら


5.Шарик 風船

Девочка плачет: шарик улетел.  
女の子が泣いている。風船が飛んで行った
Её утешают, а шарик летит.  
彼女を慰めるけれど、風船は飛んでいく
Девушка плачет: жениха всё нет  
娘が泣いている。結婚相手がいないと  
Её утешают, а шарик летит.  
彼女を慰めるけれど、風船は飛んでいく  
Женщина плачет: муж ушёл к другой.  
女の人が泣いている。夫が余所の女に逃げたと
Её утешают, а шарик летит.  
彼女を慰めるけれど、風船は飛んでいく
Бабушка плачет: мало пожила..  
おばあさんが泣いている。人生は儚かったと、
Шарик вернулся, а он голубой  
風船は戻ってきたけど、風船は青い

(日本語訳:鳥飼やよい)

<今日のひとことロシア語>
Хорошо сидим!(ハラショー シディム=いい集まりだね!(楽しいね!))

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