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2016年09月16日

ロシアのロマンスと映画

 ここでいう「ロマンス」というのは、ロシアにおいての新しい歌謡のジャンルです。ロシア人は年齢を問わず、「ロマンス」が好きです。この新しい都会的な叙情歌謡はギターとピアノなしでは語ることができません。
 ロマンスには2つの種類があります。ひとつはワルツ、ポロネーズといった西ヨーロッパの舞踏形式のもので、もうひとつは6度の下行音程を過剰に利用した感傷的な旋律様式を備えているものです。
 さらに言えば、19世紀に作られた曲は少し悲しく歌うものでしたが、20世紀に入ると少し明るく歌うものになりました。
 日本でも知られる、「トロイカ」、「赤いサラファン」、「ステンカ・ラージン」などロシア民謡の多くは「ロマンス」、ロシア・ロマンスの様式です。
 それでは、これらに該当するものをいくつかを紹介します。
 ・ギターの演奏 『二つのギター (Две гитары)』
 ・サロンのアリアとロマンス 『赤いサラファン (Красный сарафан)』
 ・歌とロマンスの間 『長い道を (Дорогой длинною)』

 それでは、次にこのロシア・ロマンスというジャンルを語る上で欠かせない作曲家イサーク・シュワルツについてお話しましょう。
 彼はレニングラード(現在のサンクトペテルブルク)でピアノを習いはじめ、1935年にはレニングラード・フィルハーモニー交響楽団との共演でコンサートデビューをしました。彼の音楽人生は華々しくスタートしたかのように見えましたが、父親が逮捕され、一家はキルギスへ追放されました。シュワルツは音楽を続けることが経済的にも難しい中、個人的に勉強を続け、伴奏者として働いて収入を得ていました。その地道な生活の中知り合ったショスタコーヴィッチの援助もあってレニングラード音楽院に入学することができ、1951年無事卒業しました。彼はその後130本以上の映画音楽を作曲し、中でも黒澤明監督の『デルス・ウザーラ』(1975年)は代表作の一つとなりました。
 もちろん彼の曲はたくさんありますから、有名な曲はまだまだあります。
 『デルス・ウザーラ』のほかに、有名なものを四つ例に挙げます。聞いてみましょう。一つ目はプーシキン・アレクサンドルをモデルにした映画で使われた曲です。二つ目はナロードニキ文化のもの、三つ目はトルコ戦争時代のロマンス、最後に挙げるのは、政治や歴史を重要なテーマにしているのではなく、「愛と別れ」をテーマにしたものです。これらは帝国時代に関する映画で、ロシアの帝国ロシア文化史に憧れて作曲したと言われています。

 さて、『デルス・ウザーラ』の話をしましょう。この作品はソ連と日本の合作映画です。沿海地方に住む人々にとって、今でも思い入れの強い作品です。監督の黒澤明は、この映画の舞台となった沿海地方に対して憧れを抱いていたといいます。ロシアと言えど、ここに生息する植物や動物は特殊です。シベリアの大自然に黒澤明も魅了されたのでしょう。
 この映画は厳しい自然に立ち向かう場面もあり、ロマンスを感じるのは難しく思うかもしれません。しかし、長い映画の中には温かいシーンもあるのです。人と人とが出会い、心を通わせていく場面です。また、別れなどの悲しい場面もあります。音楽とは映画をより引き立たせるものです。
 ぜひ、全編を通して一度見てください。この映画の中でシュワルツ風のロマンスに触れることができるでしょう。

 

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