2005年06月09日

●ラニェーフスカヤ(第2回)

彼女は脇役で主役を食ってしまうことがよくあった。「夢Мечта」という映画のポーランドのユダヤ女主人役はロマンロランも激賞したという。私が見てよかったと思うのは映画「重箱男(殻男というのが定訳だが、直訳ではカバーфутлярに包まれた男であり、このカバーはメガネカバーや車カバーなどカバーする(包む)ものと同じような形をしたものを指す。チェーホフの原作を読めば、重箱をつつくという意味から重箱男の方がよいのではないか。)」における学監の妻の役で、ピアノを引いているときに、旦那さんが一杯きこしめして擦り寄ってくる場面で、早くも遅くもなく、かといってゆっくりでもなく、自然にしかも腹に響くようにビンタを食らわせて、「また飲んだくれてるね。人がミュージックにいそしんでいるのに」というセリフにはしびれてしまった。また「パルホーメンコПархоменко」という映画はマフノーМахноとの国内戦を描いた単なる国威発揚映画だが、その初めの方にラニェーフスカヤがピアノ弾きの役で出ている。口付きタバコпапиросаをくわえながら歌うのだが、そのアンニュイ感は絶妙である。ここだけ見れば後は見る価値はない。「捨て子Подкидыш」でのリャーリャでのセリフ「Муля, не нервируй меня! ムーリャ、イライラさせないでよ」は全国的に有名になり、彼女が街を歩いていると子供達がはやし立てるので、ラニェーフスカヤはこれを嫌がったと言う。1976年80歳でレーニン勲章授与のときブレジネフがこのセリフを言ったとき、ラニェーフスカヤはそれは街の餓鬼が言うセリフですよと言ったら、さすがのブレジネフもどぎまぎして、私はあなたが大好きなんですと答えたと言う。

Posted by ruspie at 2005年06月09日 02:28
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