2006年01月11日

●知られざるロシア(6) 犬にまつわる話

革命前のロシアでは犬は不浄の生き物とされ、教会の中にでも入ってこようものなら、追い出してからお祓いをしたくらいである。魔物чертの顔は犬か豚面とされていた。赤ん坊を犬が舐めるとその子はсобачья старость(クル病で、犬の老いが直訳)にかかるとされた。犬畜生(сукин сынや сукина дочь)などの言い方もある。Еб твою мать (Fuck your mother)には本来、Пес(犬)が前についていたという。犬と同棲する女の子供と言う意味で最悪の罵詈雑言である。決して里見八犬伝の伏姫とは分けが違う。この他にсобачья радость(犬の喜び)という言い回しがあり、20世紀初めのスラムХитровка(ヒトローフカ)では、残り物で作ったシチューを指し、第二次世界大戦中は資材の不足から短く作られた縞模様のネクタイを指した。これは雑種の番犬дворняжкаの尻尾にそっくりだったからである。現代では品質が最低のソーセージや煮こごりстуденьを指すことが多い。
 1882年に「サイクリストと河のヨットマン」という雑誌が発行されてから、自転車が盛んになった。当初自転車は英国製だった。自転車をこいでいると、天敵のように犬がかけだし、サイクリストの足に噛み付くという被害が増えた。ロシアだけの現象ではない証拠に、犬撃退用に велодогというポケットに入る小型銃(レボルバー)がフランスで発売された。小口径(5.75 ミリか6ミリ)で撃鉄が外に出ず、引き金の折畳式であり、ポケットから出すときにひっかからないというものである。ここから護身用銃に発展した。他に英国やベルギー製のブルドッグбульдогという名のレボルバーがあり、かのシャーロックホームズご愛用の銃であり、ロシアでは警察や各都市を結ぶ郵便配達夫の護身用に使われた。

Приезжает председатель в поле. Тракторист пьяный.
- Сколько выпил?
- Две кружки пива.
- Врешь!
- Спросите у собаки.
Председатель спрашивает:
- Сколько хозяин выпил пива?
- Гав! Гав!
- Видите, - говорит тракторист. - Собака врать не будет.
На следующий день снова тракторист пьяный.
- Сколько выпил?
- Две кружки пива.
- Врешь!
- Спросите у собаки.
- Гав! Гав!
- А червивки сколько?
- У-у-у-у-у...
*червивка は虫食いリンゴ酒という安リンゴ酒。因みに бормотуха はアルコール添加の安い赤ワイン。
*у はロシア語では驚愕を示す。これとうなり声をかけたもの。
訳)コルホーズの議長が畑にきます。トラクターの運転手が酔っ払っています。
「どのくらい飲んだんだ?」
「ビールをジョッキ2杯」
「うそつけ」
「犬に聞いてみて下さい」
「ご主人様はどのくらい飲んだんだ?」
「ワン、ワン」
「お分かりでしょう。犬はうそつかないから」と運転手が言います。
翌日、また運転手は酔っ払っています。
「どのくらい飲んだんだ」
「ビールをジョッキ2杯」
「うそつけ」
「犬に聞いて見てください」
「ワン、ワン」
「安酒ならどのくらいだ?」
「ワンさと」

Posted by SATOH at 14:26 | Comments [0] | Trackbacks [0]