2005年07月27日

●刑務所 (2)

モスクワには警察関係で留置所 ИВС (= изолятор временного содержания、警察署にあり、容疑を受けてから拘留は3日以内で特にПетровка 38にある俗称Петрыが有名)の他に、拘置所 (следственный изолятор 刑の宣告を受ける前に入る。宣告後は刑務所行きとなる)が6ある。No. 1はマトロースカヤ・チシナーМатросская Тишинаという通りにある(地下鉄「Сокольники」駅の近く)で、辺りは閑静な住宅街。No. 2はモスクワ市内には革命前に建てられたブトゥイルカБутырка (Бутырская тюрьма)という有名な拘置所である(地下鉄「Новослободская」駅の近く)。ここには18世紀にプガチョーフПугачевやラヂシシェフРадищевも入れられていた。No. 3はクラースナヤ・プレスニャーКрасная ПресняにあるПересылка(移送用刑務所)で、No. 4は獄中の獄тюрьма в тюрьмеと言われる旧マトロースカヤ・チシナー9号棟корпус 9 «Матросская Тишина»である。1995年6月4日ソローニクСолоникという有名な殺し屋が拘置所職員を買収して脱獄したので有名。それまで脱獄者はなかったという。No. 5は比較的新しい外国人、麻薬の運び屋用にヴォードゥヌィ・スタジオーンВодный стадион、No. 6は最も新しく女囚としてテクスチーリシシキТекстильщикиがある。主として政治犯用の拘置所としてはレフォールトヴォЛефортово(昔KGB今FSBの管轄)がある。ロシアでは他に、ウラジーミル中央監獄Владимирский централ やサハリンのオノールсахалинский Онорが歴史的に有名だが、ペテルブルグのクレストゥイКресты(建物を上から見ると十字架のような形をしているためこう呼ばれる)、オデッサのキチマンКичман、バクーのバイレーフスカヤ監獄Баилевская тюрьма 、アプハージアАбхазияのドランスカヤ監獄Драндская тюрьма、シベリア(イルクーツク州)のトゥルーンТулунや、ウラルのソリカムスク Соликамскにあるベーラヤ・レーベチБелая Лебедь (直訳すれば白鳥、ソリカムスク矯正施設(刑務所)Соликамская исправительная колония No. 6, 縮めて「6番」шестеркаとも言う。同名のものがクラスノヤールスクにもある)などは近年雑誌、小説によく出てくる。
 ついでに特殊部隊についても簡単に述べる。特殊部隊спецназ (= войска специального нащначения)は歴史的にはГРУ (Главное разведывательное управление Генерального штаба参謀本部情報総局)の下、空挺部隊から1942年創設されたと考えられる。これを基にライバルであるКГБが1974年、команда (подразделение) А (= отряд альфаアルファ部隊)を創設した。現在に到る特殊部隊のエリートの登場である。この他に、アフガニスタンでは1980~1983年 Каскадが、その後を受けて1984年Омегаが活動した。1981年~93年には活躍が謎に包まれている Вымпелが存在した。
現在特殊部隊はФСБ(連邦保安局、КГБの後身)、МВД(内務省)、ГРУ、ВДВ (= воздушно-десантные войска空挺部隊)、Минюст(法務省)、МЧС(非常事態省)から税関までそれぞれ存在する。最近は内務省国内軍の特殊部隊 Витязь(1991年創設), Росич(1992年創設), Русь(1994年創設), Рысь(1995年創設), Скиф(1997年創設), Вятич(1998年創設), Мечел(2002年創設), Меркурий(2002年創設)が有名である。これらの部隊で、実戦を通じて優秀と認められたものは、краповый белет(スポットベレー)の試験を受けることができる。合格者は大変な名誉とされる。
内務省には国内軍の他に、УБОП СКМ (управление по борьбе с оргнизованной преступностью службы криминальной милиции刑事警察局組織犯罪対策局)傘下でテロ対策、暴動鎮圧、組織暴力対策行うОМОН (= отряд милиции особого назначения特命警察隊、隊員はомоновцы)とСОБР (= специальный отряд быстрого реагирования特別機動隊)がある。これらの元となったのは1978年モスクワオリンピック警備のために創設されたВнештатные группы захвата(非常勤捕捉班)である。これからまず1989年にОМОНが設立された。ОМОНには狙撃、高所、爆薬、潜水の部門を持つ。チェチェンにも1994年から2004年まで派遣され、鉄橋警備を担当した。
1989年ГУОП (Главное управлени по борьбе с организованной преступностью組織犯罪対策総局)が創設され、13のРУОП (= Региональное управление по борьбе с организованной преступностью組織犯罪対策地域局)を率いることになる。РУОП(後のУБОП СКМ)には当初3つの課があった。それぞれ情報、捜査、逮捕を担当した。名前から分かるように当初は激増するマフィア対策用であった。現在はテロ対策が主である。モデルとしたのはドイツの特殊部隊である。1992年РУОПにСОБРが設置された。СОБРの隊員は全員将校である。СОБРもチェチェンに1994年から派遣され、主として要人警護を行っている。他の特徴としては警察犬訓練所を有し、警察犬を大いに活用していることである。
この他の犯罪関係でよく新聞などでお目にかかる略語は次の通り。
ФАПСИ (= Федеральное агентство правительственной связи и информации政府連絡情報連邦庁、КГБの第12局が母体であり、盗聴 прослушкаを担当)、ГУВД (= главное управление внутренних дел内務総局)、МУР (= Московский уголовный розыскモスクワ捜査局)。

Posted by SATOH at 2005年07月27日 18:45
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コメント

さとうさん、素晴らしい記事を公開してくださってありがとうございます。多くのロシア語学習者やロシアに興味のある方々にとって興味深い読み物だと思います。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
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Posted by gonza at 2005年07月28日 05:32
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