2005年06月14日

●モスクワでの生活

Q/モスクワへ留学(駐在)するのですが、生活はどんな感じですか?

■日本人人口
  ロシア全土カリーニングラード州の飛び地を入れて広大な面積を有する割りに、2002年の国勢調査の統計によると1億4,500万人程の人口しかいません。これは何を意味するかといいますとその分、大都市であるモスクワ市(モスクワ9区+ゼレノグラード1区)で1,012万人、サンクトペテルブルグ市466万人、人口3位になりますと、150万人を切って、ノボシビルスク市142万人規模となります。その中でロシア国籍の日系ロシア人を除いた外国人日本人の数は残留届けを提出する義務の無い出張短期商用滞在者、短期語学留学生といった潜在的な人口を含めるとかなり少なく1,000人未満ではないかと考えられます。
 欧米と異なり、日本人コミュニティーの基礎が築かれたのが1970年代以降で、日系ロシア人の数も当然日系アメリカ人や日系イギリス人と比較にならないくらいの小さなコミュニティーになっています。

■日本食
 ロシア主要都市には中華・韓国(朝鮮)料理の食事が出来るレストランも多く、近年の和食ブームもあり、モスクワでは在留邦人の数で考えると供給過剰と言えるほどの和食レストラン・カフェがあります。
食材に関しては一般小売をしている和食用に輸入食品販売店もモスクワ市内に数店ありますが、地方都市になると入手が難しく、代替品での調理となります。

■水
 基本的に生水は避けた方が良いと在ロシア日本国大使館及び各地の総領事館で呼びかけていますが、西シベリア及び、ロストフ州などの一部では天然の良質なミネラルウォーターが水道水として供給されている地域もあり、生水が飲める場合もあります。

■お湯
 21世紀になっても、夏はお湯がでません。「お湯が出ない」というのは、ロシアでは集中暖房が一般的で、冬場は熱源供給会社(今は自治体によって公営と民間があります)がパイプラインでお湯を各家庭へ供給しているのですが暖房を止めると同時又は、数日ずらしてお湯も止まります。「夏はお湯が出ない」というのは全国一律ではなく、数週間お湯が出ない場合もあれば完全に9月~5月迄しかお湯を送水しないという所もありますが、戸別電気温水器を設置したり、アパートや寮独自でボイラーを設置しているなどケースバイケースになりつつあります。

■物価全般
 1998年のいわゆる金融危機以降景気も上向きでIMFに対する債務も繰越返済されるなど2005年現在安定しており、若干のインフレ傾向がありましたが工業製品~食料品の国産化等によって一般市民生活上での完成品輸入依存から脱却しつつあり、中流階級の高級志向/贅沢嗜好は一種バブル経済の第2段階に入ったとも言われています。

■医療

○保険
 医療設備の話を書く前に、保険の話を先にふれておきます。海外旅行保険、駐在員向け保険、学生向け保険等がありますが、ロシア国内の外国人が加入できる保険補償範囲は私達外国人にとっては掛け金の割りにあわない商品が増えてきました。1つは医療サービスがロシアの医療機関と外国支援の医療機関があり、基本的にロシア国内の医療機関での受診・治療を目的とした保険補償となっている為、設備の整った外国支援の医療機関での受診・治療は2次扱いとなるケースも多く、可能であれば日本を出発する前に各種海外医療・盗難保険等に加入された方が良いと想います。

○医療機関
 モスクワ・サンクトペテルブルグでは英語が通じる医師・看護士等を配置した病院・歯科等があります。
代表格として
SOS (International SOS Clinic) 937-5760
AMC (American Medical Center) 933-7700
EMC (European Medical Center) 787-7000
※会員制のクリニック/センターで会員は24時間対応、非会員は診療時間内の対応。

地方都市となると医療通訳が可能な通訳を手配する事が困難です。ロシアには通訳士としての細かい規定が無い為、北米の様に認定された医療通訳を配置している病院は少ない為、万一の場合多くの外国人は母国へ帰国し治療するか、フィンランド・デンマーク・ドイツ・フランス・イギリスで治療を受ける方もすくなくありません。

■公共交通機関と渋滞
 公共交通機関は、都市部に限らず年々整備されるようになり、特に航空機での国内移動旅客は成長する一方で、かつての鉄道による旅客が主力だった2000年以前に比べると新規参入の航空会社が毎年増えています。一方、陸上輸送ではマイカーの普及により停滞している部分もありますがトロリーバス、アフトーバス、地下鉄、トランバイ等が主要都市と郊外を結んでいます。
 モスクワなどに限らず、最近社会問題になっているのがマイカーの普及、モータリゼーションの発達らよって、そもそも自動車を大量に走らせる事を組み込んでいない計画経済時代に建設された道路や橋が急ピッチに拡張工事が進んでいるものの、地方によっては税収が国からカットされて予算配分がままならない状態の見切り発車で拡張工事をしている所もあり、工期が7ヶ月で完了する予定が6年かかって完成したものの、すでに次の拡張をしないとならない為そのまま継続工事にはいるという余計に渋滞を産むという悪循環を繰り返している工区も存在します。

○タクシー
 首都モスクワにありながら絶対数が不足しているのが正規のタクシーです。正規のタクシーは、モスクワ市9区内(セノグラードの運輸事業登録管轄不明)でハイヤー・リムジンを含めて17社ありますが、通常は流しの白タクを拾うのが一般的になっています。
 タクシーの拾い方は正規も白タクも予約センターに電話で予約する方法もありますが、白タクは乗車する前に行き先と料金を交渉して成立すると乗り、不成立なら別の車を探します。手の上げ方は水平に腕を突き出す感じで手をひろげて止めます。

■情報

○地上波放送と新聞・・・報道
モスクワで放送されているテレビ・ラジオ放送は民間・公共放送を含めて沢山の局があり、ラジオ放送に至っては、BBCやVOAといった外国放送局のモスクワ市内中継・番組放送も英語・ロシア語で行われています。しかし全国ネットの放送となると民放局には限りがあり、準国営化された公共放送と体裁が民間というものの経営者が政府系右派による放送局などがあり新聞・雑誌もこれに類似した経営・配信体系が確立されつつあります。

○ケーブルテレビと衛星放送
 ケーブルテレビはモスクワ市内中心部とサンクトペテルブルグ市中心部など各地にケーブルテレビ会社が存在し、地上波、各種衛星放送の再配信、独自の娯楽チャンネル等があり、基本契約+オプションチャンネルでJSTVやNHKワールドTVを見る事ができます。
 ロシア国内で個別衛星放送の受信は可能ですが、極東ウラジオストック・ユジノサハリンスクでは、日本から契約して持ち込んだ日本国内向け衛星放送も受信できますがアンテナのサイズが大型化します。

○日本の新聞
 通常一般誌としてのローカル日本語新聞はありませんが、各地日本人会の会誌や日本センター等で日本の新聞を閲覧する事が出来ます。また、商用サービスとしてインターネット経由による通信社等ニュース速報を利用されている方もいらっしゃいます。

○NHK国際局ラジオ日本
 ロシア国内ではヨーロッパロシア部ではイギリスのスケルトン中継、アフリカのガボン中継等の短波放送、ロシア極東地方ではアジア大陸向けの茨城県八俣送信所からの短波放送の他、夜間であれば、中波(俗にAMラジオと呼ばれるもの)がウラジオストック・ハバロフスク当りでも窓際にラジオを設置すると聞えます。※但し混信電波強弱(減衰)が激しい。 NHKWorld

等があり、NHKではニュースに限ってインターネット上でもオンデマンド放送が日本語の他21カ国の言語で行われています。

○ロシアの声日本語放送

 ГОЛОС РОССИИ/ゴーラス・ラシィー/ロシアの声は旧モスクワ放送と呼ばれていましたが現在、日本向け日本語放送を短波と中波(AMラジオ)、インターネット放送で行われている他、放送では紹介されておりませんが、ヨーロッパ向け衛星放送のエクスプレス衛星枠で実施されています。公共放送で毎日行われていますのでロシア国内の情勢・概要を知る上では唯一の日本語放送です。

The Voice of Russia  ГОЛОС РОССИИ


■一般生活として
○全般支出と買い物
 ざっくばらんな言い方をするとお金次第という側面もありますが、質素な生活をこころがけて贅沢をしなければ家賃を含めて月700ドル程度でまかなえますが自炊できるかどうかで大分食費と家賃で左右する所も出てきます。外食をするとそれなのに出費がかさみますし和食を食べにレストランへ行くとランチタイムなどリーズナブルな値段設定になっていても回数が増えればそれなり・・・といえるでしょうか。

○多様化する複合型商業施設と店舗
 外国資本国内資本合わせてスーパーやショッピングモールの進出が増えています。一時は富裕層を中心とした客層をターゲットとしたショッピングモールがありましたが現在は低所得者層~富裕層に至まで誰もが買い物を楽しみながら併設された娯楽施設で遊べるモスクワのショッピングセンター・大型複合商業施設の代表格とも言えるМегамолл/メガモールことメガМега等があります。一方ソ連時代から知られている中心部の旧国営デパートグム/ГУМも高級ブランドショップをはじめ小~中規模のテナントが入居しモスクワのショッピング・デパートとしての顔として生まれ変りました。このほか市場も市内各所に点在し市民の台所としての役割を今も経営や仕入れ形を変えつつ健在でにぎわっています。

○保安
 日中安全な地域でも夜間になると様子が180度ガラッと変わってしまう所もありますので注意が必要です。危険情報等はお互い外国人同士・地元の方に聞くなどして保安情報収集に努める必要があります。ロシア各地には在ロシア日本国大使館と総領事館があり担当地域の大使館領事部及び総領事館にインターネット上のサイトで一般危険情報や、日本人会発行の会誌等で注意喚起事項として情報が掲載されていますので可能であれば週に1度程度ネットで閲覧、あるいはメーリングリストに申込みをして情報を得た方が良いでしょう。

在ロシア日本国大使館 在サンクトペテルブルグ総領事館 在ウラジオストック総領事館 
在ハバロフスク総領事館 在ユジノサハリンスク総領事館

○万一の事態
 万一犯罪や病気、怪我にあった場合は警察や消防・救急といった緊急連絡が必要になります。
この場合、モスクワ市であれば英語のオペレーターがいる場合もありますが原則ロシア語による通報になります。

緊急電話番号
消防 01 警察 02 救急03 ガス漏れ 04

★モスクワ市内
日本人会事務所 280ー6036
外国人登録所(УВИР) 207ー0113 200ー8427
日本人学校 131ー8733
在ロシア(モスクワ)日本大使館領事部 202ー3248 
在ロシア(モスクワ)日本大使館領事部医務室 202ー3853
※このほかの地域は上記リンクの各地総領事館サイトで御確認下さい。

筆/ぴえるばや

Posted by qastaff at 2005年06月14日 01:56