ロシアおもしろ情報サイト
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☆“ロシアンぴろしき”に来ていただき、ありがとうございます。

◇みなさんは、ロシアって聞くとどんなイメージを思い浮かべますか?

ロシアはすぐ隣の国なのに、なぜか普通の日本人にとってロシアは遠い国です。
冷戦時代のソ連のイメージでしょうか、寒くて厳しい冬を思わせるのでしょうか。ロシアというとなにか冷たく、暗く、重い印象が先行してしまうのです。

でもロシアにも性格の暗い人もいれば、明るい人もいます。内向的でとっつきにくそうな人もいれば、開放的で話しやすそうな人もいる。冷静沈着な人もいれば情熱的な人もいる。、悲観的な人もいれば、楽観的な人もいる・・・(私はむしろロシアには明るくて話し好き、情熱的で楽観的な人のほうが多いと思います)。

そしてロシアにも普通の人の普通の暮らしがあります。みんな仕事に行き、学校に行き、家庭を守り、ご飯を食べ、家族と一緒に、あるいはひとりで好きなことをして余暇を過ごしているわけです。

いろんな人がいます。酒ばかり飲んで働かない人もいれば、酒は一滴も飲まず仕事ばかりしてるワーカホリックもいる。グルメもいれば、カーマニアもいれば、映画好き、読書の虫、詩作にふける人、ネットの住人、対戦ゲームファン、パソコンオタクもいます。ストリートアーティスト、タトゥー入れまくり人間、自称発明王、アマチュアジャズダンサー、ジムで最高の肉体づくりに励む人、ヨガで究極の体位に挑戦中の人、ソープオペラばかり見ている主婦、ダーチャ(別荘)での野菜作りに余念がないお父さん、零下の寒中水泳は身体に良いと信じて泳ぎをやめないおじいさん、社交ダンスクラブで第二の青春謳歌中の熟年カップル、演劇通い詰めの人、毎日サウナに入らないと落ち着かない人、一日中ベンチに座っておしゃべりしてるおばあさんたち、一日中公園でドミノに興じるおじさんたち。ヘッドホンをシャカシャカいわせ四六時中ポップスばかり聞いてる若者、革ジャンにビョウが基本のヘビメタ人間、髪の毛を逆立てたパンクファン、スケボかかえたティーン、危険な絶壁に挑戦し続けるロッククライマー、屋根裏で自家製ウォッカを作り続けるおじさん、風景ばかり描いている絵描きさん、風水にはまって部屋が東洋の置物ばかりになってしまった人、家がサモワール(ロシアの茶沸かし機)で埋まってしまったコレクター、チームネーム入りの赤いマフラーを巻いてスタジアムに通うサッカーファン、アマチュアホッケーチームで黒いパックを追うサラリーマン、ポップスターの追っかけの女の子たち……なんか個性的な人ばかりになってしまいましたが…、いろんな人がいます(もちろんほとんどの人は平凡な、普通の人です)。最近は、日本のアニメや漫画、Jロックにコスプレ、フィギア人形に夢中になる若者が増えてきました。戦時中の日本の戦車に詳しい軍事マニアまでいます。

それぞれの分野でそれぞれの文化や芸術が花開き、傑作があり、崇拝される人がいて、人々はそれに熱中しているのです。その点は日本となんら変わりありません。でも、ロシア人の興味の多様さといったら、半端ではありません。

ロシア人はまことに個性的で、好みも関心の方向もみんなまちまちです。日本にいる人に聞かれていつも答えに困るのは、「ロシアでは今なにが流行っているの?」という質問です。実はロシアにはブームなるものは(少なくとも日本のように、多くの人が注目してまねをする流行というものは)ほとんど存在しないのです。誰がなんといおうが「自分が好きなものは好き、私はこれに没頭する」というのがロシア流。流行に従うという気持ちが希薄なのです。「ブーム」というものがないということが日本人の私にとって驚きでしたが、メディアが騒ぎ立て、何か流行るとみんなが同じ格好したり、同じものを食べる日本人のほうが、ロシア人には驚くべきことなのかもしれません。

ロシアには実に多種多様な文化があること、そしてそれをとりまく人々と街の風景があること。そんな、ありのままのロシアを伝えたくて、ロシアンぴろしきをつくりました。「ピロシキ」は日本人に親しみがある(数少ない?)ロシアの言葉のひとつですよね。親しみをもってもらいたいという願いをこめて、こんな名前にしました。

もうひとつ、ロシアに行って、日本人がまず驚くのは、ロシア人が日本人が思っている以上に日本に対して、並々ならぬ敬意と関心を持っていることです。日本の車やハイテクへの注目が高いことはもちろんですが、その興味の範囲は、日本料理からアニメ、映画、音楽、武道、華道、書道、文学、建築、伝統芸能、工芸など様々な分野へと広がります。寿司や車やロボットやアニメだけではない―日本の歴史や文化への評価も非常に高いのです。

例えば、ロシアで人気の村上春樹の本は、今や駅のキオスクにも置かれ、実に多くのロシア人に愛読されていますが、それだけではなく、三島由紀夫、川端康成、安部公房、芥川龍之介、樋口一葉、谷崎潤一郎など日本の文学も、重版を重ね、読まれています。よしもとばなな、村上龍、遠藤周作、井上靖、司馬遼太郎、横溝正史、有吉佐和子、円地文子、島田雅彦、鈴木光司、高見広春、赤坂真理などなどたくさんの小説が出版されています。さらに芭蕉から小林一茶、枕草子、源氏物語、新古今集、日本書紀も翻訳されており、普通のロシア人が読んでいたりします。(例えばロシアのアマゾンともいえる通販サイトOZON.RUを見て下さい。こんなにたくさんの日本の文学・小説が売られているんですよ~)

そして日本人に対し、ある種の敬意や愛情を抱いてくれているロシア人が多いのです。日本というだけで「絶賛」し、日本人というだけで「大好き!」といってくれるロシア人も少なくありません。これはロシアで暮らし始めた私にとってまったく意外なことでした。日本にいたときには、日本人であることに誇りが持てずにいたのです。日本にいる日本人の多くがこのことを知らないのです。

日本人の大部分は、ロシアへの関心が薄く、とくに知識を深めようともしてない、一方、ロシア人は日本に大きな関心と敬意を抱き、いろいろと勉強している……日露のこの互いの国への興味の「温度差」に愕然としました。

ロシアとはいろんな過去のいきさつや難しい領土問題もある、それは分かるし、しっかり交渉していかないといけない。でも、まずはロシアを身近に感じてほしい。なんだかんだいってもお隣さんなのだから…(新潟からウラジオストックまでは飛行機で1時間半)。そして相手の素顔をしっかり見てほしい。そこから見えてくるものがあるはずだから…。何か興味を持てるものが見つかればすばらしいです。また、ほかの国を知ることで、きっと自分の国のことをもっと深く知りたいと思うようになるかもしれません(私はロシアに来て日本の歴史・地理・伝統文化・国民性についてあまりにも知らないことを痛感し、もう一度勉強しなおすことになりました…)。それはきっと日露の関係改善だけでなく、私たちの国の国益にもかなうはずです。そして何よりも個人の人生を彩り豊かなものにしてくれるはずです……。そんな願いをこめてロシアンぴろしきをやってます。


◇なぜ、ロシア映画?

といっても、最初このサイトをつくった時には、なにから紹介していいか分かりませんでした。前述のようにロシアはあまりに多様で、どこから手をつけていいか分かりません。それで、まずなによりも、日本では情報の少ないロシア映画やロシアアニメについての情報を中心に、ロシアのサブカルチャーを伝えようと思いました。

ロシア映画といえば、これもまた、「静かで暗い感じ。付け加えて寒いかな?」というのが、第一印象でしょうか?確かに日本では、タルコフスキー監督、ミハルコフ監督、最近ではソクーロフ監督などが有名で人気もあります。このような芸術性の高い、重厚感のある映画=ロシア映画というのが、日本では一般的なのではないでしょうか。
でも、ここにも大きな多様性が――ロシア映画はそれだけではないのです。コメディ、バイオレンス、ラブロマンス、多種多様なジャンルの映画があり、ハリウッド映画全盛期のロシアで、今でも長く静かにロシア人に愛され続けているのです。
映画は、大げさに言ってしまうと時代を反映する文化遺産です。ロシア映画を通して、その時代のロシアの社会情勢、ロシア人の考えや風俗、気質に触れることができると思います。そんなロシア映画のすばらしさ、楽しさを一人でも多くの方に知ってもらえたらなぁと思います。
残念ながら、日本で紹介されるロシア映画は、とても数が少なく、時代の古いものが多く、ジャンルにも偏りがあるようです。ロシア人に愛されているロシア映画を、ひとつでも多く、このサイトで紹介できればうれしいです。


◇ロシアンフィルムに恋をして・・・

個人的な話になりますが、私はロシア語の格変化を勉強した程度(つまり、初級)でモスクワに来ました。格変化さえ覚えていない状態、まして複数形格変化なんて、「あるのは知っています」の状態でした。

ロシアに知人がたくさんいたわけではなかったので、もっぱらTVにのめり込んでいきました。もともと、映画が好きだったということもありますが、ロシア映画の楽しさに触れ、私の常識となっていたロシア映画像とは違う映画に触れて、もっともっとロシア映画を知りたくなっていきました。
もちろん、最初は△★!□◎☆×△★□◎☆と聞こえてきました。が、そのうち慣れてくるものです。映画の場合、映像があるので言葉で理解できなかったところも、映像で補えますしね。>

言葉が分からなくても、それなりに楽しめるのです。まず、ロシアのアニメ(ムリト・フィルム:Мульт фильм)から。言葉を話せない"子供"として楽しみ(今でも楽しんでいます。というより、こよなくムリト・フィルムを愛しています…)、そのうち段々と映画にも進出していきました。

難しい言葉は分からないので、難しい話題の映画よりコメディ映画の方が断然理解しやすく、楽しめました。

ロシアコメディは、多彩で笑いがあるだけでなく、どこか影もあるところが素敵だと思います。60年代のコメディもドタバタぶりが「お約束」通り。最近日本で見ることができなくなった「ドリフ」のりという感じで面白いと思います。機会があったら、ぜひご覧になってください。言葉が分からなくても絶対面白い!です。字幕に頼ることはできないので、映画を観ているときは、自分でも驚くほど集中します。そのおかげで、ヒアリング力はつきました。まさに映画で学ぶロシア語だったわけです。
映画を何度も繰り返し見る。これはどなたにも有効なヒアリングアップの方法だと思います。ロシア語を学習されている方々には、ぜひ「生きたロシア語」に触れていただきたいです。


◇ロシア映画の魅力

概して(映画でもアニメでも文学(?)でも)、ロシアものには、スーパーヒーローはいないと思います。
例えば、ハリウッド映画は必ずヒーロー(ヒロイン)がいて、一人で何でも片付けていきますよね。ヒーローの考え方はいつも道徳的でしっかりしていて、仮に主人公が悪党だったとしても、改心して最後には必ずヒーローになる。映画を見ている側も、安心してヒーローの道徳的思考に寄りかかって、安心して映画を見終えることができます。

でも、ロシア映画は・・・。主人公はどこか頼りなく、影が薄く、悪党だったりする・・・。道徳的じゃなかったりもするかもしれません。他の登場人物たちもアクがあって一筋縄ではいかない人々。みんなが主人公で、一体誰が主人公なのか分からない。次に何が起こるか分からない。主人公は何も片付けてくれないで、ただ混乱させていくだけ。主人公の考えを通じて、目を通して、安心して映画を眺めているわけにはいかない状態になります。これこそ、まさにロシアヴァーチャルリアリティの状態。映画を通して、ロシアに居るという体験ができるといってもいいかもしれません。なぜなら、ロシアの人々はみな一人一人が主人公。ロシアは自我が強く、感受性が強く、表現豊かな主人公だらけの国だと私は思います。
もちろん、お金のかかったハリウッドの大作もすばらしい。だけど、だけど、何が起こるか分からない、秩序を無視したロシア映画(ロシアという国)を知ってしまったら、いつもお決まりのハリウッド映画は、私には少し物足りなくなってきてしまいました。
映画の秩序のなさに酔ってしまう。これこそ、ロシア映画の魅力といえるのではないでしょうか。 どうぞ、みなさんもロシア映画を観て、ロシアを感じてください。

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