2001.5.16/ひよこ

特集:トゥシスベを追え!


ロシア人のアイドルテレビ番組Тушите свет!(トゥシーチェ・スヴェート!=明かりを消してください!)は2000年の5月からNTV(ロシアの民放)で放送が始まった、10分間という短いニュース解説トーク番組です。内容は毎日のトピックで政治の話、事件・事故の話、イベントの話などなど多岐にわたります。
少し変わったところだと(その日にたいした事件がなかったのか)、「今日は(学校の)先生の日」という回もありました。
こういった毎日の話題を取りあげるトーク番組は下手をすると陳腐になりがちですが、そこは番組制作者の努力と登場人物達の世相を斬る(?)巧みな会話で「トゥシーチェ・スヴェート」は大成功を納め、下手なニュース番組よりも面白いとロシアで人気を博している番組なのです。
私にとっては難しい話(政治の話とか)は聞き取れないこともあるのですが、ここでは、愛情を込めて、「トゥシスベ」と命名したいと思います!
それでは、愛すべき登場人物紹介といきましょう。
登場人物紹介
レフ・ユーリェヴッチ 司会のレフおじさん:Лев Юрьевич Новоженов(レフ・ユーリェヴィッチ・ノヴォジェノフ)
実はNTVの人気司会者。
「トゥシスベ」の他にも「スタールィ・テレヴィーザル(古いテレビ)」や「セボドニャチカ(今日)」など人気番組の司会を務める。
とぼけた声で、少し皮肉った事を言うものの正確にその場の雰囲気を掴み、自分のものにしてしまう名司会者。
フィリップ・シャーリコフ 犬のレポータ:Филипп Филиппович Шариков(フィリップ・シャーリコフ)名前の由来はブルガーコフ「犬の心臓」から
いろいろなところに行ってくれる特派員犬。大抵、国会前が多いのですが、南極に行ったりしたこともあるのです。
フリュン・モルジョフ ちょっとガラの悪いブタ:Хрюн Моржов(フリュン・モルジョフ)
でもロシア庶民代表なのだそうだ。いつもほっぺが赤くて、言うこともおおざっぱ(?)。まくし立てるようなしゃべりは、まさにロシア人。 フリュンとは聞こえない(フンガと聞こえる)が鼻を鳴らすのがクセの憎めない存在。
毎回違うはずのゲスト 毎回違うはずのゲスト(毎回クマです)
ゲストは必ずロシアホテルから中継で生出演します。女性の時は口紅つけてお化粧します。
写真はNTV掠奪事件直後の回で、ゲストは未来のTNT(モスクワローカルテレビ局)総責任者ババイ・ヨカルン氏(もちろん、現NTV総責任者ボリス・ヨルダン氏をもじって)
ステパン・カプースタ 清い心の持ち主うさぎ:Степан Капуста(ステパン・カプースタ) 注:ロシア語でカプースタはキャベツの意味
こちらはロシアインテリ代表なのだそう。落ち着き払ったしゃべり方がインテリ風?フリュンとは反対の正当な意見を整然と話す。どちらかというといい子タイプ?


お分かりのように、レフおじさん以外の登場人物は、皆CGアニメで描かれたロシア人達なのです。
ロシアアニメをこよなく愛するひよことしては、この人気番組でもアニメーション技術をベースとしたフリュンやステパン達の活躍を特筆すべきでしょう。実際、フリュン、ステパンは、“モスクワのこだま”というラジオの番組に彼らのみで出演したことがあるという人気ぶりです。これぞ世界に誇るロシアアニメの底力ですねぇ〜。
「世相の核心をつく面白さで、たった一年間でどの報道番組よりも人気を得た・・・」番組としてドイツの新聞にまで紹介されたトゥシスベ。
しかし、一連のNTV騒動で1ヶ月近く放送が中止されていたのです。Захват НТВ(NTVの掠奪)と題して新聞の一面をにぎわせた出来事も傷心のジャーナリスト達を残して沈静化してきました。
注目すべき、レフ・ユーリェヴィッチはфизическое лицо(物理的な面)だけの活動と明言しNTVへの復帰が決まり、トゥシスベもレフおじさんと共にNTV復活か・・・と思いきや。
な・・・なんと、14日夜からTV-6での放送が開始されました!!!!!(パチパチパチ)
なぜ、TV-6というNTVとは関係のない放送局なのかと言うことは、NTV事件に関わってくるのですが、ここでは詳しくは書きません。
一時期はモスクワローカルテレビ局TNTで放送され、モスクワ以外のトゥシスベファンには全ロシアに向け“モスクワのこだま”での音声放送も同時に行われていました。
長い長い放浪の末、どうやらTV-6に落ち着くようです。
???いえいえ、まだ予断は許されません。いつどこでどう変わるか分からないのがロシアという国ですから・・・。
とにもかくにも、日本のトゥシスベファンの方々には(朝方5時前という時間ですが)ネットTVで再び見ることが出来るようになりましたね。現在、“モスクワのこだま”での音声放送もされているので、音だけでも・・・という方はこちらをどうぞ。
さて、さて。「トゥシスベ」、TV-6復帰の第一作目は・・・。
「2000年5月〜2001年4月」という文字が刻まれたフリュンとステパンの墓碑の前で、シャーリコフは二人がいなくなった寂しさに吠えます。そんな時、雷が二人の墓石を打ち・・・

フリュンとステパンの復活!
しかし、二人の談話の舞台はなぜか、台所(ロシア語でクーフニャ)。なぜ?
実は特に検閲のあったソ連時代では、秘密の話、本音の話や深刻な話は、子供が寝た後いつも台所でひそひそ語り合われたそうです。
つまり、この背景の台所(クーフニャ)自体が、政府権力とその手先(ガスプロム)に占拠されたNTVに対する皮肉、またその流れを汲んでいるのです。
しかし、レフおじさんはどこへ行ったのか???
レフ・ユーリェヴィッチは指名手配されていました!
特派員のシャーリコフがレフ・ユーリェヴィッチの後を追跡。
しかし、精神病院にも、刑務所にもレフ・ユーリェヴィッチの姿はありません。
悲しむ視聴者をよそに、フリュンの妻が登場し、「トゥシーチェ・スヴェート=明かりを消してください」で、いつもの歌をレフおじさんの物真似でフリュンとステパン二人だけで歌い上げ、おわります。
やっぱり、レフおじさんがいないと、少し寂しい「トゥシスベ」。いつになったら、3人の息のあったトークが聞けるのでしょうか。
早く戻ってきて!レフおじさん。
そうそう。なぜ「トゥシーチェ・スヴェート=明かりを消してください。」という題なのかというと、番組の最後は必ず明かりを消して、3人でその日のトピックに合わせた歌を唄って仕上げるからです。これも何ともロシアらしい締めくくりですよね。
今日(5月16日)は、北方領土問題についての語る「トゥシスベ」でした。
今日のモスクワでも特集しましたが、森元首相発言に日本もロシアもゆれてますね。因みに、インテリ代表ステパンは北方領土返還してもいい派、庶民代表フリュンは返還有り得ない派でした。

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