gonzaの過去レポート

お湯が出ない!!


ロシアの普通の住宅(大部分がアパート)では、1年に1回全面的にお湯が止まります。
給湯管の整備点検と称し、多くは6月から9月にかけて、突然(アパートに掲示されることもあるが)お湯が出なくなりなります。
その期間は1ヶ月にも及びます。
ご多分にもれず、僕のアパートでもお湯が出なくなりました。今お湯が出なくなって歴2週間目を迎えています。8月とはいえ、モスクワの夏はもう終わったみたいで、どんどん寒くなっていきます。くやしいことに、この前まで30度をこえる猛暑が続いていたのに、お湯がとまったと並行して、急速に寒くなりました。今は街を歩く人の多くがコートを着ています。
さて、このような長期間お湯が止まっている間、ロシアの一般市民はどのようにしてお風呂に入っているのでしょうか? 最初僕は水シャワーに挑戦してみましたが、やはり寒かった。「全身を顔と思えば寒くない」と自分に言い聞かせ事にあたりましたが、頭を洗うのはなんとかこなしたものの、身体に取り掛かるとこごえるような冷たさに全身がブルブル震え、途中で逃げ出してしまいました。
ロシア人の友人から、「鍋でお湯を沸かして入る」という情報を聞き、さっそく試してみました。家にある大きそうな鍋を寄せ集め、4つあるレンジにかけて一斉に沸かしました。が、時間をかけて沸かしても得られる熱湯の量はたかがしれており、「お風呂に入る」のは無理だと分かりました。仕方がないから、たらいにすこしずつくんで水でうすめながらピチャピチャお湯あびしました。寂しかったけれど、水シャワーよりはずいぶんましで、やってみるとお湯を節約しながらなんとか身体を洗うことができるものだなと思いました。
友人の話によると、ロシアの普通の家庭には巨大な鍋が常備されており、非常時(といっても毎年必ずやってくるが)にはそれをつかってお風呂のためのお湯を沸かすそうです。確かにロシア人の家を訪ねた時にでっかい(身体の半分くらいの大きさの)鍋が置いてあるのを見たことがあります。
「沸かすのにすごい時間がかかるのではないか?1時間ぐらいか?」と聞くと
「うちはガスレンジだから早い。50分ぐらいだ」というので、
「なんだやっぱりすごい時間かかるんじゃないか」
と日本人の僕は思ってしまいました。
電気湯沸かし器で沸かす人もいるそうです。よく旅行ショップなんかで、携帯用の湯沸かし器が売ってますね。コーヒー等を飲むために、電気コードがついた金属棒を直接コップに突っ込んで沸かすアレです。
ロシアではその巨大版が売っており、直接お風呂につっこんで沸かします。沸かしているところを見たことはないですが、かなり豪快な風景だろうと思われます。(危険性はないのだろうか?)。どのくらい時間がかかるのかも知らないのですが、「結構早い。便利だ」という声を聞いたことがあります。(どの程度「早い」のか信用できないが・・・)
反対の場合もあります。2週間前には水かでなくなりました。
お湯の栓をひねると熱湯は出るのですが、冷たい水が出ないのです。その時はちょうど30度を超す猛暑が続いており、熱湯で顔を洗わなければならないのは地獄さながらの光景のように思われました。
大家さんのおばさんに電話して来てもらったのですが、「僕の下の階の同じ列の住人が水を出しっぱなしにして、ダーチャ(別荘)に行ってしまった」。「タンクが空になり水がでなくなった。鍵があわず管理人が鉄の扉を開けることができない」。
つまり「住人がダーチャから帰ってくるまで待つしかない」
とのことでした。
「つらいだろうが、こらえてくれ」「日本人のあなたには珍しいだろうが、ロシアでもこんなことは珍しい」 という励ましとも冗談ともとれる言葉を残して去っていきました。(大家さんもそのままダーチャに行ってしまった)
しかたがないから、風呂桶やたらいやバケツに熱湯を入れて、時間をかけてさましてから使っていたのですが、なかなか冷めないし、部屋中熱くなるし、すごくめんどくさかった。結局「水なし」の生活は猛暑の中、土日をはさみ4日間続きました。
この事件には、さすがの僕も、なんとも疲れて果ててしまいました。
というのはそれにいたる歴史があったからです。
そのさらにさかのぼること2週間前、洗濯機の据付け工事を依頼しました。今のアパートに引っ越したときに持ってきたのですが、電気と配管が通っていないために使えず、洗濯物がたまりにたまっていました。なかなか来てくれなかった「サンテクニカ」(修理屋)のおじさんがやってきてくれて真剣な顔付きで壁を壊してどんどん配管と電気結線を済ましていきました。
ところがいざテストとなってみると肝心の洗濯機(ポーランド製)が全く動きません。
おじさんは「洗濯機の修理が必要だ。新しいのを買った方がいい」と言い残して帰っていきました。
くやしいので、その後何時間か洗濯機をいじくっていると、なにかのショックか突然洗濯機が動き始めました。
「やった」と思ったのもつかのま、今度は接続部のパイプから水がすごい勢いで噴出し、部屋が水浸しになりました。
それでまたもや「サンテクニカ」のおじさんに電話をし、またもや待って来てもらい、配管を直してもらい。「やっと洗濯できる」と喜んだところ、こんどは水自体がでなくなったわけです。
整理すると「洗濯機を使う」ために
「配管工事に来てもらう」→「洗濯機が動かない」→「たたいたりして何とか動いた」→「水が噴き出した」→「再び配管工事に来てもらう」→「今度は水が出ない」→「待つしかない」
という、 1ヶ月にわたる複数の行程を得てきたことが分かります。
こちらで暮らしていると「水が出る」「お風呂に入れる」「洗濯機が動く」ということが、いかにありがたいことか、分からせてもらえる機会が必ずきます。
他にも「電気がつかない」「レンジが壊れて料理がつくれない」「壁がはげ落ちる」という事件にも遭遇しました。
前にいたアパートでは、知らないうちに風呂場から水が噴き出て、電気設備から火花が飛び散り、トイレで用を足そうと思って感電しかかったことがありました。
こちらで普通の住宅で暮らしていると、一年中なにかがかならず壊れているという気がしますが、日本にいた時には当たり前に思っていた日常の「普通のこと」が、実は奇跡的に実現されていることなのかもしれず、「ありがたいことなのだなぁ」と思える、ということは貴重な経験だともいえます。

(’98年8月18日 モスクワ)


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