2007年12月23日
7号 劇場へ急いで。きっと間に合うよ
12月9日日曜日のモスクワユーゴザーパド劇場の公演演目は、
★14時から
Сценическая фантазия по стихам Д. Хармса
Все бегут, летят и скачут (子どもへの演劇)
★16時から
Сценическая фантазия по стихам Д. Хармса
Все бегут, летят и скачут (子どもへの演劇)
★19時から
У. Шекспир
Гамлет (ハムレット)
子どもへの演劇は2回公演、その後の夜の公演も含めてシューラはずっと出演です。
モスクワ空港に到着してすぐにパスポートコントロール。入国者も少なく、窓口はいくつか開いており流れはスムーズでうれしい。すぐにターンテーブル前に出てこれて、私のトランクはすでに回っていました。なんという早さでしょう。過去ここで何時までも待たされたりしたのに。
携帯電話時計が狂っていて、いえ正しくは狂わせてしまい、モスクワの時刻がわかりません。いったいま何時でしょうか?劇場の公演に間に合う時間でしょうか。時計は……?ありました、それは12時20分を指していました。うむ、たしか開演は午後2時。すべての流れがこのまますんなりと流れていけば、私はきっと劇場開演に間に合うだろう。
換金率は悪いけれども100米ドルからロシア通貨ルーブルに両替しました。2250ルーブル。タクシーに乗るためにはルーブルが必要だから。
名古屋セントレア空港でわかれたトランクと、無事に再会できてよかった。「ここまで長かったね」。トランクに泥がついているけれど、そんな些細なことは許します。さっさと荷物を手にして出口へ。
実は何回もモスクワに来ているのですが、いつもお迎えがあったり、複数人とやってきたりで、ひとりで空港から市内へ向うのはじめてなのです。モスクワ空港名物タクシー客引きに、やはりとり囲まれて、しっかり後ろに付かれていたけれども、「タクシー案内所」の小さなスペースを覗きました。ひとり座っているロシア無愛想顔おじさんがいます。
「ユーゴザーパドナヤ、ユーゴザーパド劇場へ行きたいけれど、お金は幾らで何時間かかりますか?」
「ふむ、そうだね、1500ルーブルだね。時間は1時間でもみといてもらおうか」
「エッ、1500ルーブル(日本円で約6千円)、高いですねえ」
「そうかいじゃあ、やめるかい」。
「と言われても、歩いていくわけにはいかないし、タクシーしかないからねえ」とは、私の心の声。
「ふうん。わかったわ。1500ルーブルね」。
「じゃあすぐ運転手をよぶよ。これにサインしなさい。お金1500ルーブルはここで払いなさい」
と、後ろから「おいらなら1400ルーブルで行くよ」と、やりとりを聞いたいたのだろう別の運転手が言う。「だって、もうこちらで決めたんだよ」。などと言ったのかな、わたし。と、すぐそばに背の高い男がすっとやってきた。
タクシー案内所無愛想顔おじさんが、「君の運転手だよ。ほい、ユーゴザパドナヤだよ」って言ったようです。
背の高い運転手はトランクを持ってくれるわけではなく、それは料金には入っていないぜ、みたいにさっさと前を歩き、でも、近くに留めてあった車を指して「これだよ」。車のトランクに私のトランクを積むのはさすがにやってくれて、さっさと乗ってさっさと車はスタートしました。
車がスタートしたのは飛行機を降りてから20分後くらいだったでしょうか。早い動きです。モスクワとしてはとても早い動きです。
モスクワを丸い時計とすると、空港は11時の位置。ユーゴザーパド劇場は7時から8時に近い位置です。モスクワ市は、円のような大環状道路にぐるりと囲まれていますから、劇場まではその環状道路を走っていけば、11時の位置から8時の位置までぐるりと走れます。市内中心部の大渋滞には巻き込まれずにけっこう早く行くことができることは、もうなんども体験済みです。が、大環状道路も時には激しい渋滞となるときもあります。それが一番恐ろしい。
が、走る走る車は走る。寡黙な運転手はすっごく運転が上手く、追い越したりすり抜けたりで、ビュンビュン飛ばします。
空は曇っていますが、道は乾いています。道端には雪が残っています。
モスクワに来たと思った瞬間の、隣を走る車のこの汚れ
白樺の木立と雪の景色も、ああ、モスクワだと思った瞬間です。
流れがとてもよく、高層ビルが多く見えると、おお、見慣れた景色が見えました。右手側にユーゴザーパド劇場が見えます。あれ?どこで曲がってくれるのでしょうか?車はまっすぎ行き過ぎてしまいました。あれ?
運転手が「ユーゴザーパドナヤだ、どこで降りる?」
「劇場よ、ユーゴザーパド劇場へ行くの」
「おいら劇場なんか知らないよ。劇場なのか?地下鉄ユーゴザーパド駅じゃあないのか?」
「違う、私は劇場へ。バックしてよ。ホテルサリュートの方へ」
私はこういう移動に関するロシア語動詞はしっかり覚えていない。まあ、でも指差しで、戻れ、まっすぐ行ってなどと騒ぐと、運転手は黙ったままぐるりと回って、劇場の前にやってきて「ここか?」
高層住宅の1階部分にある劇場は表に看板があり、それはもう私には何度も見慣れたもの。車を降りると運転手は私のトランクを下ろしたまま、「じゃあよ」って、すぐに車を発進させていった。と、いうか車がどこへ向って走っていったのか、それは私の関心ごとではありません。
私は重いトランクをひっさげて、劇場の入り口前の階段を3段あがり、勢いよくドアを開けて、小さな待合で、その奥のドアがまだ開いていないことを知り、ああ、開演に間に合ったのだ、と汗を拭きながら心から喜んだのです。これに間に合うために名古屋から時間をかけてやってきたのですもの。
いまから公演される「こどもの演劇」は、演出家シューラのここユーゴザーパド劇場でのデビュー作品ですから。彼の渾身の演出作品ですから。私はどうしても何がなんでも観たかった作品なのです。
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