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2006年09月08日

**53号** 一番めの雨

~~~5月9日 サンクトペテルブルクの朝~~~~

 私は早朝から奮闘しているので、もうすっかり長い一日なのですが、世間ではまだ朝も早い午前9時半ごろの空港です。でも、出迎えの人もそれなりに居て、タクシーの客呼びさんもそれなりに仕事しています。

 オレクとの再会は、1月以来のことなので「わあ~久しぶり」というより、「また会いましたね」が、正しいみたい。でも、名古屋とサンクトペテルブルクの距離を思えば、再会はうれしいです。
 オレクはしゃべりづめ。

 「飛行機早く着いたね。僕も空港に早くついて、散歩でもと思っていたら、『モスクワから』とか聞こえて、ああ、早く来て良かったよ!タクシーが予約してあるよ。でも、まだ時間じゃあないから、待ってね。その前にトランクを取って来よう。ああ、あの赤いトランクかい。新しいじゃあないか、そうか新調したのかい。レナは、親戚で用があってきょうは会えないよ。彼女とても忙しい。ジーマはね、モスクワのオバサンが亡くなって、モスクワに行っているよ。たぶん、きょう帰ってくると思う。きょうはね、戦勝記念日だから、あとでパレードを見に行こうね。空腹かい?モスクワでは何食べた?また、ブリヌイを食べに行こう。そうそう、メンシコフ宮殿に行こう。僕の教え子が働いているから、案内してもらうよ。ところで、どこへ泊まるのかい?前と同じところかい?地図とか持っているかい?」

 みたいに、わたしになにもしゃべらせず、オレクの独壇場。

 「ああ、ガリーナホテルの地図はねェ……」とバッグの口を開けると、オレクがバッグを覗き込みます。まるで父親が子どもの持っているバッグを覗くように。
 「オレク、だめ見ちゃあダメ」。あわてて私から離れて、
 「ああ、ごめん。僕の娘かと思っちゃった。レディのバッグを覗いてしまって、失礼しました」

 おいおい、私はあなたの娘ですか。ならば、オレク、あなたは何歳ですか(大笑)

 ホテル地図を渡すと、手にして「タクシーを見てくるよ」と、走ってタクシーたまりのところへ飛んでいきました。やっとサンクトペテルブルクでの第1回目深呼吸をして、空を見ればまもなく雨が落ちてきそうな気配なグレーな空です。

 オレクが戻ってきたら一台のタクシーがやってきて、大型体でおひげの運転手サーシャが、「おはよう、日本からおいでのお嬢様」。おほほ、そうですよ。

 車に乗り込むと、運転手が「僕は日本にとても興味があって日本人のお客様が大好きだよ。昨日も日本人を乗せて○×*★○へ行った」と言い出して、オレクもまた、彼に「僕は日本に行っていたのだよ」と話し出し、ふたりのにぎやかなやりとりをぼんやりと聞いていました。道はそれほど混んでいません。ところどころ工事をしています。
 「サミットの準備だよ。僕たちの街はどんどん変わっている」。

 と、雨がさっと降ってきました。あらまあ、雨の戦勝記念日パレードかしら。車のワイバーが懸命に働きます。一瞬、ざあーと降ったら、ピタッと止みました。
 「ああ、一番目の雨だねえ。きょうは良い天気になるよ。素晴らしい記念日だよ、お嬢さん」。

 一番目の雨、朝の通り雨。晴天を呼ぶ雨。

 「きょうは、街を歩こう。気持ちが良い晴天になるよ。すばらしい一日になるだろう」と、オレク。
 車は、雨上がりの街の、印象的なトロイツキ聖堂を曲がり、ガリーナホテルの前で止まりました。
 


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