2006年08月08日
** 42号 ** お寿司を食べながら
トイレに追いかけられては困ったね。電話を持ってドアのところから私を引っ張るシューラの電話口の応対で、サンクトペテルブルクのレナからのものとわかりました。
私は、9日の早朝にサンクトペテルブルク(以下サンクト)へ移動するのですが、細かいことの連絡をあちらで待つレナ、オレクやジーマに、まだしていないのでした。レナがしびれをきらして電話をかけてきてくれました。それも話しが早いシューラの携帯へ。
電話を渡されて、 「ああ、申し訳ないです」と、日本人らしく、電話しながら頭を下げている私。
「いま、どこにいるの?サンクトペテルブルクへは何時に着くの?こちらでみんなが待っているのよ」とレナが、早口で言います。
飛行機便名などくわしいことは、私の予定表を見ながらのシューラが、レナに伝えてくれました。レナは「迎えに行くのはオレクだから」と言ったようです。
トイレを済ませて席へ戻ると「オレクが待っているって。ジーマがダーチャへ行くと言っているって、レナも美術館へ行くって…」など、シューラは伝えてくれます。「友達が多くいると楽しくって忙しくって、でも良いよね」と、シューラもうれしそうです。
お寿司を食べながら、お酒を飲みながら私たちの話は盛り上がっていきます。私、ロシア語出来ないけれど、シューラの話は全部わかりますから。
お芝居の話し。
「シェークスピアは、僕たちの劇団は大好きな演目で、これからも充実させていくだろう。『ハムレット』をまた日本へ持っていきたい」。
「日本へは『結婚』も持って行きたい。せりふに日本語を取り入れて、日本語でもたくさん言いたい」。
私が日本語で、「結婚しましょう」と教えたら、ダメでしたね。俳優は、舌がこんがらがり言えません。「けっこん」が難しそうです。思わず笑ったら、「『結婚』の芝居はみんなが笑ってくれたら良いから、笑って欲しいから。日本へ持って行きたい」。
演劇大学の話し。
「演劇大学(GITIS)は、厳しくって課題がたくさんあり、いつも忙しい。でも、僕はもうなんでも早く片付けてしまうけれどもね」。
33歳で、演劇大学演出学科に再入学して、演出の勉強をしているシューラです。現役俳優として舞台に立ち、学生生活との両輪を、厳しいでしょうが、でも楽しんでやっているようです。
「18歳で入学したときは、朝早く家を出て、帰るのも遅く、毎日毎日、大学と課題や芝居のことで頭がいっぱいだったから。家族とも会う時間は少なかった。どうしても俳優になるためにと、勉強をたくさんしたのだよ」。
いつだったか、シューラのママが言ったことがあります。
「とても苦しい生活の中で、シューラを俳優にすることが私たちの夢だったのよ」。
ロシア語の話し。
「言葉は唇に乗せて言うことがとても大事。『イズベスチャ』(ロシアの新聞)が読めても、E-mail がロシア語で書けても、言葉が言えなければダメだから。ロシア語で話しなさい。いつもロシア語で話すこと。頭の中にあることを伝えることがとても大事なこと」。
これはシューラがいつも私に言ってくれることです。「間違っているかどうかも、言葉にしなければわからない。言葉にして伝えていけば、覚えていけるから」とも。
シューラは、俳優。ロシア語の最高の先生です。
「ロシア語単語には必ず、強く言う部分があるから、そこは強く発音をすることが一番大事。日本語は、強く言わないから、あなたたちは気をつけて、強く言うこと。(私の辞書を見ながら)ほら、力点が付いているこの印を守ることだよ」。
片手はこぶしをつくり、もう片方の手のひらに、こぶしを打ちつけながら、力点の強さを表現して教えてくれます。
「 Ж の発音は、下手だね。舌に力を持たせることだよ」。
「 Р は、巻き舌。これもいつも意識を持つこと」。
「 Л は、練習しなさい」。
「 Х は、唇に覚えさせること」。
など、俳優は厳しく教えてくれます。が、この生徒がふがいないので、いつも笑われてしまいます。
そして、必ずほめてもくれます。「必ず上手になっているから。いつも話しなさい。言いなさい」。
「良い先生に教えてもらいなさい。下手な先生では上手くはならない。上手な先生は、良い耳を持っている」とも。
お寿司を不味いとか、ヘンだとか、偽ものとか言いながら、モスクワ風韓国風日本風味のお寿司だから、こんなものかと妥協して食べてしまいました。お酒もロシアで飲む日本酒だから仕方がない、と言いながらも飲んでしまいました。
語らいは、とても楽しいです。と、「あのお、お支払いをお願いします」。キム君が請求書を持ってきました。
私たちは、二人で同時に「ギャッ!!」と叫ぶほど請求をされてしまいました。いっぺんに酔いを醒まさせてくれたので、帰り道はややどころか、かなり寒かったです。
シューラはそれでもご機嫌で、「今度は違う寿司屋へ行こう」。そうね、また行きましょう、安いところへね。美味いところへね。きっと。
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