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2006年06月25日

** 29 **俳優は、こころの仕事のひと

===5月6日晴天のモスクワ南西部 でお買い物====

 約束の時間より「渋滞で遅れちゃった」とシューラがやってきました。(妻の)ターニャもいっしょです。いまから行く、カリーナは彼らとはすっごく仲良し、「カリーナの家は、最近引越しをして広くなった。まだターニャは、そこへは行っていないのだよ」。ターニャはこの後もいっしょに「夏の夜の夢」のお芝居を見ます。子供たちはお留守番、もう大きいから「大丈夫だよ」。

 地下鉄ユーゴザーパドナヤ周辺のマーケットで、カリーナへのおみやげの買い物をします。ターニャは、車の中で待っていてもらって、シューラと私で、ケーキとお菓子と花を買います。

 歩きながらシューラが言いました。「昨日はお花をありがとう。昨日の芝居どうだった?」
 「うん、良かったよ」。
 「ダメだったでしょう。シャヘットが間違えた。彼は……。僕は気分が悪くなってしまった。でも、お花をもらってうれしくなったから、良かったよ」。

 ははあん、昨日終演後、ちょっと難しい顔をしていたのはそういうことだったのですね。
 「息が合う」のが舞台の上でとても大事なことです。俳優同士の息がぴったりあって、エネルギーが客席に飛んでくると、客席からもエネルギーを舞台に、俳優に送ることができます。そういう見えないもののやりとりこそ、生の舞台の醍醐味です。
 間違いは、きっといくつもいままでもあることでしょう。相手とかみ合わないとか、相手がトチルのも舞台の上ではよくあることでしょう。それを客席に感じさせずに、芝居を続けていくのがプロでしょう。
 
 シャヘットとのやりとりの間違いがわかる私ではありません。たぶん俳優同士だけがわかる間違いだったと、思っています。シューラは厳しい人だから、相手にも厳しいから。
 贈った1本の花で、気分が良くなり元気になってくれればうれしいことです。

 さて。
 「たくさんケーキの店はあるけれど、ここは一番美味しい」と評判のケーキ屋はお客がいっぱいです。たくさん並ぶケーキの中から、「カリーナが好きなものはこれだよ」と、選びました。

             0605MocPte 142.jpg

          
 ケーキ屋の隣にある、チーズ屋では、チーズ巻きみたいなものが気になります。伸ばしたチーズ板にハーブやミンチ肉や果物などのいずれかを包み込んで、海苔巻きの太巻きみたいな1本のままか、あるいは切り分けて種類を混ぜてのパック売りにしています。シューラに「これ名前はなんというの?」と聞いたら、「食べたいの?これも買って行こう。3本ください」とお店に言う。
 「あれ?どうして?」
 「カリーナと僕んちと君もホテルで食べると良いよ」
 「だめです。ホテルではこんなにたくさんは食べられないから」
 「食べられないの?冷蔵庫に入れておけば良いよ」
 
 1本でも切り分けパックでも、とても量が多いですから、私がひとりで食べきる前に、固くなってまずくなってしまうことでしょう。 
 「あとでカリーナにひとつもらうから。カリーナとシューラとの2本買ってください」
 
 これ名前はなんというのだろうか?もう一度シューラに聞くと「はは、僕知らないの」。そうですか。名前は知らなくとも食べることができますものね。あとで、ターニャかカリーナに聞いてみよう。


              0605MocPte 141.jpg


 次は花屋さんです。
 たくさん並ぶ花の中で、気に入ったのは、白いゆりの花です。いま、咲いている花とつぼみもあって豪華です。シューラは盛んに、「(紫の)アイリスもいっしょに入れると良い」と言いますが、私は赤いチューリップが気になって、花屋さんに「ゆりのここ(茎を指で指しながら)を切って、チューリップもいっしょに入れて」と言ったら、花屋さんが「ダメ、ゆりは長いままで。チューリップは短いからゆりと合わない」と言われちゃいました。
 シューラも「切ってはダメ。長くそのままが良い。アイリスも入れよう」とさかんに言っています。

 日本なら、ゆりの茎を切ってチューリップをアレンジしてくれるけれどもね……。と思っていると
 「日本の花はみんな、短く小さくしている。ロシアは長くそのままが良いの」と日本で花束をもらうことが多い来日経験豊富な俳優らしい、ご意見を言われました。
 そうです。日本はいけばな文化のある国です。小さくても豪華にできるのだから、とは、心で思っていても言いませんでした。「そうだね。ここはロシアだものね」。そして、長い茎のままでゆりを買い、アイリスはやめました。


0605MocPte yuri.jpg
 
(カリーナが短くカットして花瓶へ)


 花屋さんで切って欲しかったのになぁと、ちょっとむっとしていた私です。私がむっとしていることを、気がついているシューラです。
 そんな私に、「君の好きなりんごジュースを買って行こうね」。まあ、なんとも上手に気分を変えさせてくれますこと。さすが、こころの仕事の人ですこと。りんごジュースの紙パック入りを買いました。これ美味しいのですよね。もう、にこにこです。

 カリーナが住む高層住宅街は、ユーゴザーパドナヤから車で15分くらいで到着しました。


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