2006年05月28日
** 13 ** 「検察官」を観る Ⅱ
==5月3日 夕方から夜 ユーゴザーパド劇場にて ===
お芝居の舞台は観客の想像力があって成り立ちます。目の前で演じられるのは、ウソの世界です。舞台の上で、役を演じる俳優が「ああ、昨日からなにも食べていないよ」とせりふを言っても、それはウソだとみんなが知っています。「馬の用意ができました」と言われても、それはウソだとみんながわかっています。でも、「あいつは偽者だったのか」とせりふが出たとき、客席のみなは「やっとわかったのかい?」と笑います。ウソなのにウソの世界に、入り込んでしまいました。観客はそれが楽しくってたまらないのです。遊びです。
ウソとわかっているものにどうして、こんなに喜ぶのでしょうか?これが演劇が持つ、観客の「想像力」を引き出させて遊ばせてくれる、おおいなる魅力なのでしょう。
想像させてくれない舞台、これほどつまらないものはありません。なぜ、観客に想像をさせることができない舞台が生まれるのでしょうか?
せりふで説明されつくしたり、俳優が動きすぎたり、逆に動かなかったり、衣装も含めてあらゆるところが汚く醜くなっていたり、芝居が下手で見ているのが不安になったり……、こういう想像力が剥ぎ取られるような舞台は観客は楽しめません。もう2度と見たくないものになります。
わたくし、この劇場の「検察官」は、日本で2回、モスクワできょうを入れて3回の計5回見ています。いつも発見があり、刺激があり、楽しくって、5回も見ても「もっと見たい」と思えます。
私に、大いなる楽しい想像力を与えてくれるのです。
「ああ、気持ちが良かった。素晴らしかった。俳優たち、ステキだったよ」と、終演時、観客は拍手を贈ります。「ブラボー」の声もかかります。
俳優たちは達成感に満ち溢れ、きらきらと輝いています。「俳優やっていて良かった」と彼らのいままでのすべての苦労が、観客からの拍手喝采で報われます。
大満足の観客の私、達成感にあふれる俳優のシューラ。私たちは、もう明かりを落とした劇場の前で、手を取り合って喜びました。「良かったよ~!最高だよ~」
私はホテルまで歩いて帰りました。飛び跳ねるように歩いています。素晴らしいお芝居の世界で十分に遊べて、うれしくってたまりません。
いいえ、お芝居だけでなく、こんなことを言ってくれました。
「明日は、ダーチャへ行こう。きっと暖かい日だから、シャシーリク(屋外での肉の串焼き)とワインで楽しもうよ」。
「何を着て行けば良いの?ダーチャははじめて行くから」。
「黒い服を着ておいで、そして君はなにもしなくって良いからね」。
化粧をすっかり落としても輝いているきれいな顔で、俳優は私に言いました。
ねっ、飛び跳ねてしまいますよね。
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