2006年04月01日
♪ 25号 ♪ ユーゴザーパドの「マクベス」
モスクワからやってきたユーゴザーパド劇場は、シェークスピアの「マクベス」も公演しました。21日昼、25日昼・夜、26日昼と4回の公演を、観客の大拍手で終えました。
公演した劇場、東京天王洲アイル内「アートスフィア」劇場は、この「マクベス」26日昼公演を最後に、その看板を下ろしました。その最後の舞台を飾ったのがユーゴザーパドでした。
なんだか、感慨いっぱい。いままで何回も通った、アートスフィア劇場が終わりました。
私は、25日夜と26日昼の部を観ました。どちらも終演後は鳴り止まぬ拍手と「ブラボー」です。私ももちろん精いっぱいに拍手しました。そうせざるを得ないほどの興奮に包まれました。「マクベス」には、シューラは出演していません。モスクワでも見ていません、だから今回はじめての観劇です。
幕開きからもう大興奮です。重要な役回りの「3人の魔女」を、男優が上半身裸の後姿で演じます。3人は、舞台の常識を破って客側ではなく舞台の奥へ向かって、せりふを発します。当然、十分に声は観客へ届きます。頭の後ろに仮面をつけての背中での演技です。が、これがだんだん仮面がまさに顔となり、背中が乳房とみえたり、前上半身の動きそのものなのです。
おお、これぞ鍛えられた俳優だ!!

いまもまねして彼らの動きをやってみたけれど、腕は疲れるし、背中に緊張感を持たせるとは、腹筋背筋だけのチカラではないものがあるので、あったりまえですが、私には出来ません。
俳優シューラも後で「とても難しいもので、彼らは相当の努力をしている」。当然でしょう。
舞台は、4枚の360度回転する鉄の扉があるだけです。これが、時間も場所もあの世とこの世も分ける役割を持っています。赤い照明がとても効果的です。美しく怪しく……。
名優達の素晴らしい演技。名優とは役になりきった俳優そのものが、そこにいることだとわかります。
マクベス役の ワレリー アファナシェフさん。ロシア国・人民芸術家の称号を持つ名優中の名優です。舞台はもちろん、テレビ・映画でも大活躍です。いつだったかモスクワへ行ったときテレビをつけたら、彼がなにかのCMでニコリと笑い出演していました。在露のみなさんは、きっとテレビで映画で、彼にはお会いしていると思われます。
シューラが「僕の大好きな尊敬する俳優は、アファナシェフです」と言います。
アファナシェフの「マクベス」は、次々と人を殺していく狂気と錯乱を、観客の胸に直球で届けてくれます。私は、もうまたまた、心臓がバクバクするほどの興奮に包まれてしまいました。
マクベス夫人を演じるこれまた、すごい女優 イリーナ ポチェリシヴィリさん。モスクワで素(す)の彼女に会ったことがあるのですが、素でも花が咲いている真の女優です。
夫マクベスに殺人をけしかける妻の狂気はすさまじく、その怪しさは、これまた、私を苦しめてくれました。「ああ、あなたはナント恐ろしい」。が、どこかで女性同士としてでしょうか、その強さが理解できた私も、また狂気を持っているのでしょうか。

女優イリーナは、ユーゴザーパド劇場の舞台衣装デザイナーでもあります。この「マクベス」の舞台も、みな同じ色合いの布を豊富に使ったドレス=男性もドレス=ですが、家族毎に同じデザインをどこかにさらりと取り入れて、同族であることを観客に見せてくれます。他の演目でも彼女のデザイン衣装は、それだけでも芸術性の高い評価を得ているものです。
これはあとで、楽屋におじゃましたときに知ったことですが。男性たちが舞台で着ていた鎧(よろい)と見せる網目状の上着は、あれは本物の鉄の鎖できている本物の鎧です。重さは10キロはあるようなもの。うわあ~、こんな重いものを身にまとって、軽々と芝居をしていたのですか!!
「マクベス」も俳優たちはなにも手にしません。戦の場の刀も楯もありません。宴会の杯も酒もありません。王位を継承するネックレスと、マクベス夫人が狂死する場面のナイフだけだったでしょうか。でも、観客の目の前にはすべてが存在するのです。
シューラは以前「マクベス」の将校の役で出演していました。「出番が少ない役でしょ?」と聞いたら、彼はちょっと口を尖らせて、「はじまりのエピローグを語る重要な役だ」。だから、今回その役を演じたアンドレイ サンニコフさんへも惜しみなく拍手を送りました。
もうおひとり、モスクワでシューラの演劇大学仲間として紹介していただいた デニス ナグレトジノフさん。舞台から溢れるエネルギーを感じました。シューラにそれを伝えると、「彼にぜひ伝えて、大事なことだから」と。楽屋で日本のおみやげをお渡し、前述の鎧を見せていただいたのです。
芝居は誰でもできます。が、俳優は、だれもができるものではない。天の神様が与えた天性と、努力と指導者とそして、観客が育てるものと、「マクベス」の最高の舞台を見ながら、おおいに痛感しました。 ありがとう、素晴らしい舞台でした。
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マーミンカさま
いつも拝読しております。舞台素晴しかったのですね。それにしても読みながらマーミンカさんのパワーというかエネルギーというか熱気を感じます。ほほえましいくらいです。凄いですね~。関心しつつ旅行準備に励みます!
ユーゴザーパド劇場に、演出家ベリャーコビッチ氏に、俳優たちに、と、この劇場は観客をすっかり魅了してくれます。罪深い劇場です。まったく!
来日公演とシューラとの1週間の興奮がまだ冷めやらず、写真やパンフレットを眺めたりして、この週末はグズグズしています。
今度はいつ来てくれるかな?それより私が会いに行こうかな?!