2006年04月01日
♪ 24号 ♪ 「巨匠とマルガリータ」の舞台
お芝居でも映画でも、絵画も音楽もなんでもそうですが、いろんな感想があって良いものです。「よかった」と感動する人もあれば、「なにかわからん」「つまらん」「時間の無駄」など、100人が見れば感想は100個です。感想は正直であってこそ良いものです。
そこで一番大事なのことは、「認めあう」ことと思います。「あんな良いものが、なぜわからないの!」とか、「そんなこと知らないの」とか、「そう思うあなたは、ヘンですね」とか、そういうことは言ってはならない,「ああ、こういう感想を持つ人もいる」と、認めることがとても大事だと思います。
芝居との出会いは人生の縁ですから、楽しめば良いのです。とことん楽しめばそれが、芝居です。
さて、「巨匠とマルガリータ」は難しいです。新約聖書、ローマ帝国、悪魔、ソ連、モスクワ、言論弾圧、精神病院、予言、などキーワードがたくさんあります。
2003年5月、モスクワからやってきたユーゴザーパド劇場は、日本へ芝居ではじめて「巨匠とマルガリータ」持ってきました。観劇した多くの人々が度肝を抜かれたようです。舞台は、トタン板が7枚ぶら下がっているだけです。あとはなにもありません。俳優が手に持って出てくるのも、ボウランドの杖と医者のカルテ台と電話とテープと手品のトランプとピンポン玉くらいです。長編芝居にたったそれだけです。

私は、その来日公演の芝居を見る前に原作を読みました。1度目、さっぱり話がわかりません。2度目、ノートに登場人物の名前を書きながら、人間関係などを整理して読みました。でも、まだ理解できません。そして、5月にはじめて観劇したのです。俳優の声が聞きたくって、当時はイヤホンからの日本語訳をきかずに観劇したので、これまた理解はできません。が、「俳優を見て、聞いていましょう」と楽しみました。その後に、また原作を読み、前回よりはちょっとだけ理解できたようなものですが、さて。
モスクワへ行き、モスクワ南西部の住宅街のなかにあるユーゴザーパド劇場で、「巨匠とマルガリータ」をはじめて見たのは、2003年10月のことでした。そう、日本公演で見たあとでした。悪魔のボウランドを演じたのは名優アビーロフでした。怖い怖いボウランドでした。
この小劇場での「巨匠とマルガリータ」は衝撃でした。日本で見て知っているはずの舞台なのに、音も光も俳優の動きも、なにもかもが衝撃的でした。あまりのショックで、休憩時間にトイレで吐いてしまったほどです。
舞台に登場する悪魔ボウランドは、本物の悪魔か!その一味は滑稽さの中に恐怖と気味悪さを持っているし、それらに踊らされるモスクワ市民の狂気、マルガリータが悪魔の一味となってでも会いたい巨匠への愛、最後にモスクワの空を飛ぶ彼らの姿など、もうすっかりマイってしまったのです。
次にモスクワで見たのは、05年の1月でした。前回ほどではありませんが、ワクワクドキドキして芝居を見ていました。名優アビーロフはその前年に亡くなり、演出家ワレリー ベリャーコビッチが自らボウランドを演じました。教養高く隙がないボウランドです。すでに観劇3回目ですが、計算されつくした俳優の動きはとても美しいとあらためて感動しました。
そして、今回4回目、東京天王洲アートスフィア劇場で3月22日・23日は夕方から公演されました。私が見たのは24日午後からの舞台です。7000円のチケットはちっとも高く感じません。3時間30分の公演時間は、ちっとも長くありません。
28人の俳優たちのほとんどは、いくつかの役を掛け持ちします。かなり刺激的な肌もあらわなシーンもありますし、手品やどたばたも。ささやく俳優の声から怒鳴る声、なま歌にダンス、シリアス、グロテスク、コメディもあれば、せりふに日本語も取り入れています。
まったく俳優の技量の大きさ・深さを全部見せびらかしてくれます。マイッタです。
シューラの役は、夜の部では少しカットされたようです。夜の部をご覧になった方残念でした。が、24日午後の部は「日本には君のファンが多いから出番を多くしよう」と演出家、日本人スタッフからのお声もかかったとかで、十分に舞台で見せ場をつくっていました。
手品シーンと、あるシークレットシーンは、彼のお得意です。悪魔の一味に噛み付かれて吸血鬼になってしまう狂気も、またお得意なグロテスクさで、観客にうけています。
もうひとつお得意が女装です。太目の体系を巧くカバーできるおしゃれな衣装に、きれいな銀髪と大きいイヤリング、身体の割には細い足とハイヒールで踊るシーンは、かなり注目度が高い見せ場のひとつです。あとで聞けば「背中のファスナーが上がらなかった」とか。なぜでしょうねえ?(笑)
素晴らしい「巨匠とマルガリータ」の舞台です。日本で公演してくださってありがとう。いまも目に浮かぶトタン板の光です。また見たいです。何度でも見たいです。すっかり私は酔わされました。
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