2005年10月22日
【 56号 】 Внимание !! (ハイ 集中!!)
~~~~~8月8日 晴れの映画撮影現場 モスクワ ~~~~~
(この号、写真たくさん、重いです)
きょうもすっきり爽やかな晴れです。でも、昨日よりはちょっと気温が低く、ビルの影などに吹く風には、秋の気配も感じます。空には白いモクモク雲が流れていきます。
シューラの車は、モスクワ南部から中心部へ向かって走ります。ラッシュ時には渋滞しているこの大通りも午前10時を過ぎたこの時間はスムーズに走って、窓の外には、いくつか見慣れた景色があります。左手には以前泊まった「スプートニク」ホテル。好きなホテルです。親切な部屋係の女性や青い目のとても美形!!青年給仕がいましたね。
有名なガガーリン像が見えます。
レーニン像もあります。
小さな教会が見えます。以前よりもきれいになっています。
このあたりを右手に曲がってさらに行くと……、ダニロフスキー修道院とホテルがあります。ここのホテルはおすすめです。とても静かで落ち着いています。料理もとっても美味しい…。
などと、もう私もかなりのモスクワ通です。クレムリンが見えてきたら、シューラは道端に止って地図を出しています。きょうの現場を捜しているのでしょうか?また、走り出したもののどうも自信がなさそう。でも、私にはどうすることもできないので、後ろの席で、また窓の外をきょろきょろと見ているだけです。
都心の古い住宅街に入ってきたようです。「しばし待っていて」と彼は車を降りて、なにか捜しているような?いまも私はきょうはどんな撮影現場なのか、建物の中か外なのかさえもわかりません。行けばわかるので、聞きません。と、いうかシューラもわかっていないのじゃあないかな?そんなわけはないか。
戻ってきたシューラは「ここで車を降りて」。

古い住宅街の中庭が、現場でした。すでに幾人かが集まっていますが、まだ仕事にかかろうという雰囲気ではありません。カメラ担当者が木組みの足場を組み立ています。が、他のメンバーはお茶をしながらおしゃべりです。シューラは私を幾人の人に紹介してくれました。
「まあ日本から。ようこそ」。
「日本のKitano (北野武)の映画を見たよ」
「サムライ映画はたくさんあるのですか?」など、シューラの通訳?で交歓です。
誰が俳優で誰が監督でなど、いまはさっぱりわかりません。

シューラはやっと落ち着いたようです。やっと笑顔になってくれました。

「きょうはここが終わったらユリアに会いに行って、それから僕の家で夕食だよ。明日は、マルレンに会いに行こう」。はい。彼の言うとおりにします。
シューラが着替えてきました。他の俳優たちも集まってきました。それぞれの役割が動き出しました。俳優は向こう側に、スタッフはカメラの後ろに、見学者はもっと離れたところに、つまり私は用意された簡易イスに座って「見学していなさい」です。
最初はカメラテストのようです。いく人かのスタッフがきりりと動き回っています。俳優たちもカメラの前で移動しながら発声準備もしているようです。シューラも何度も口をあけたり、身体を柔軟にしています。
「Просто повезло」(和訳は「運が良かっただけ」という意味)という題名の映画撮影。

きょうの場面がどんな場面で映画の全体の中でどんな位置なのか、どういう設定なのか、さっぱりわかりませんが、こういう機会もそうそう経験できるものではないので、興味津々で見ていましょう。
今まで集まっていた人が散り、空間ができて、ひとりが建物の向うへ行き、大きな声で
「Приготовились !!! Внимание !!!」
撮影現場に緊張感が走ります。それは見学者の私にもわかります。大きな声を出した彼は監督であり俳優でした。


監督が演じる、役の彼が、建物のこちらからあちらへ歩いて行くと、建物の影からシューラたち3人が彼を襲うのです。シューラは少年の役でしょうか。かなりデカイ悪ガキのようですね。1度撮影したらその度にモニターで確認です。シューラは私をよびます。モニターの中では、歩いてきた男をからかって襲う若い兄さん達の悪そうな顔が大写りでした。でも、俳優も監督も不満そうです。

それからその場面を何回繰り返して撮影をしたでしょうか?
監督の大きな声での「Приготовились !!! Внимание !!!」 が繰り返されます。
途中雲が太陽をさえぎってしまったので、太陽待ちもあって、とても時間がかかっています。やっと「OK」となり次の場面へ。
でも、先ほどの場面の続きではないようです。その後わかったのですが、いろんな場面の細切れ撮影なのですね。きょう、出演の俳優登場場面を写しておくというものでしょうか。だから、シューラはもちろん他の俳優たちも、次々に場面に合わせて監督の指示どおり動き回っています。
その間に、メイクは俳優の顔を直したり、監督助手は、背景に写りこむだろう遠くにある資材置き場みたいなところまで走っていったり、照明係はいくつかの照明器具を設置したり、はずしたり。
撮影が始まったころやってきた、ちょっとオーラの出ている男性、デカイ声で話している男性、私は注目させられた彼がそばにやってきて、「シューラからあなたのことは聞いています。あなたが日本から来てシューラはいつも喜んでいます。シューラは僕の親友です。僕はイーゴリーです。よろしく」と、おっしゃって。ちょっとドギマギしてしまったのですが、うれしかったです。そのオーラはやはり俳優でしたか。

《白いシャツは イーゴリ・赤いシャツ(衣装)は シューラ 演技で意見交換中》

住宅街での撮影ですから、住人や通行人らが見にきています。
※次号に続きます。
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シューラが活躍している場面、とくと拝見できました。ロケをしている風景には何度か遭遇したことありますが、ここまでじっくり見学したことはありません。ましてやシューラの撮影現場など!以前、ユーゴザーパド劇場では台本というものは存在せず、舞台せりふは口伝え、という話を聞いたことがあります。嘘か誠かわかりませんが、もし本当だったら演出家も俳優は相当の技量を持っているということになりますね。貴重な報告をこれからも期待しています。
お芝居には台本は必要な重要なものでしょう。前々回の来日公演時、シューラが「変更した部分」と言い、何枚かの用紙を持っているのをちょこっと覗いたことがありますが、せりふの削りとか舞台での移動のテンポらしきものが書き込まれていました。
俳優は、新作の稽古にはいる時点では、もう完全にせりふを覚えていなければならないので、稽古に台本を持ってウロウロするのは、あのベリャーコビッチ氏は許すわけがないでしょう。
真相ははたして?私も彼らの芝居つくりはおおいに興味があります。
この映画の撮影でも、シューラをはじめ他の俳優たちも現場では、台本らしきものは手にしてませんでした。監督の指示のもとで、俳優のかなり自由な発想で動いていたようにみえましたが。映画の場合、前後がまったくわかりませんから見学していても、なにがどうなっているのか?でした。