2009年08月13日

●新帯研 第68回

「ロシア語黒帯研究会」とは何か知らない方のために、会の趣旨について再度書いておく。ロシアへ興味を持つ人はそれなりにいるようだが、NHKのラジオ講座の扱いを見ていると、ロシア語学習者の人口が減っているようだ。初級を終えてから次の段階に進もうと思っても、教材自体があまりなかったのだが最近充実してきているのはありがたいことである。しかし英語と比べるとやはり少ない。その状況を打開する一つとして、露露辞典を使えるか、ほぼ使えるロシア語学習者を対象として、小話という短くて文脈の取りやすいテキストを使って、主にロシア語会話力向上のためにこのブログを活用させていただいているわけである。ロシア語の初心者や初級者にも参考になるとは思うが、基本的な文法を知らない人(生格、完了体などという用語を聞いたこともないという人)向けではない。そういう人は、NHKのラジオ講座テキストや現代ロシア語文法(城田俊、東洋書店)を勉強するか、手元において読むのから始めるとよい。ロシアの小話はオチが分かっても面白いものは少ない。それは日本人がロシアの大衆文化に対する理解が少ないことと、笑い(面白いかどうかと思うこと)というものはあくまでも個人的なものだからである。出題する小話自体は学習という観点から選んだものなのでオチも面白くないものが多いということを頭に入れて欲しい。名前は黒帯研究会だが、師範科や master classといった一方的に教えるものではなく、あくまでも私も含めてロシア語力を高めるためなので、正しい答えがない場合もありうるということと、文意は会話では身振り手振り、イントネーション、文脈(コンテキスト)による場合が多いという言うことを申し上げておく。それと黒帯研究会についてだが、まず黒帯とは何ぞやということになるが、私は実戦で使えるロシア語を使えるレベルと考えている。少なくとも電話で(身振り手振りなしで顔の表情などを見ないで)ロシア人とロシア語で用が足りるレベル以上ということでもよい。ただこういう定義を人に押し付けるつもりもない。定義が決めたからといって実力が上がるものでもない。黒帯研究会も黒帯同士の研究会という解釈でもよいし、黒帯を目指す人の研究会というのでもよい。人それぞれである。それにロシア語の勉強というのは一生精進しなければならないことに変わりはない。そういうつもりで帯研を始めたのだが、やっているうちに徐々に変わってきたように思う。そこで新帯研について最近考えたことを書いておく。
一応新帯研は初級から中級までの間の学習者を対象としている。ロシア語学習者で中級というのは、どの程度をいうのかは異論も多いと思うが、私はガイド試験に受かるか受からない程度、つまりガイド試験受験を目指せるレベルであり、プロ(黒帯)の一歩手前と考えている。それではプロ(黒帯)である上級(ガイドや通訳、語学教師、ロシア語を使う商社・メーカーなどの営業職)というのはどうかというと、時制や人称の転用、法(接続法や仮定法などの)、動詞の体をよく理解し、文語、標準語、口語、俗語、隠語、詩語などの文体の違いが、文章でも会話でも、露文解釈でも和文露訳でも意識できるレベルにあることであると思う。プロがみなこの上級のレベルにあるということではない。そういうレベルになくとも大抵の仕事自体はこなしていけるのも事実だからだ。ただそのままのレベルでよしというような甘えた考えを持っていると、難しい仕事にぶつかったときに対応できないというだけの話なのである。今回の課題は、
Человек, посетивший мастерскую художника, обратился к нему с просьбой:
- Не можете ли вы мне что-нибудь предложить – недорого и в масле.
- Банку сардин.
設問1)和訳せよ。
設問2)次の文のうち正しいものを述べ、和訳せよ。
a) Туман поднимался от земли.
b) Туман поднимался с земли.

Posted by SATOH at 2009年08月13日 17:19
コメント

長らくのご無沙汰です。
このところロシア語から遠ざかっていたので,
まったく自信喪失状態ですが,あえてトライしてみます。よろしくご指導をお願いします。

設問1)
絵画の巨匠を訪れた人が彼に頼んだ。
「何かオイルの中でも安いものを教えていただけませんか」
「オイルサーディン(缶)」

巨匠は,オイルを「油絵具の中でも安いもの」ととらず,「オイル漬けの安いもの」ととってしまった?

設問2)
霧が地面から立ち上っていた。

難しいです。отは行為の起点となる人または事物を表し,с は運動の方向を示し,откуда?の問いに答えるのだとすれば,両方とも文法的には間違ってはいないかもしれません。ネットで調べてみると,a) は単に方向のみを示すので,地面に接触していなくてもかまわない→ 地面の方向から b) は接触している地面から直接のようでした。ここでは,霧は地面の方向から立ち上っているということもできるかもしれませんが,地面そのものから立ち上っているという訳のほうが自然かと思いましたので b) を選びたいと思います。
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オチは「油絵の具」ではなく、「油絵」です。つまり油絵を譲ってくれという図々しい申し出に対して、ただならイワシの油漬けの缶詰くらいだよと皮肉ったもの。設問2についてはご理解の通りなのですが、どちらも正しいのです。私の訳は、
画家のアトリエを訪れた人が画家に(次のような)お願いをしました。
「何か譲っていただけるものはありませんかね?油で高くないものを」
「イワシの缶詰一缶なら」
解説)a)とb)どちらも正しいが、отは方向のみを示し、сは表面からということを述べている。

Posted by メイ at 2009年08月26日 00:31

油絵でしたか。言われてみて初めてよくわかりました。おもしろいアネクドートですね。
ロシア人はどこからこんなユーモアあふれる発想が出てくるのか不思議です。
このレベルのユーモアを日常会話で使えたら気持ちが落ち込んでいても楽しくなりますね。
ありがとうございました。

Posted by メイ at 2009年08月26日 21:43
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