2009年06月25日

●新帯研 第53回

最近ロシア語中級向けのよい参考書が出版されてきたので、それに基づいてどう初級以降の勉強を独学で続けていくか書いておく。ロシア語の発話能力(和文露訳)をつけるには、一般的に、アルファベットの書き方をマスターし(できれば筆記体。アルファベットが書けないと文や語彙の暗記ができない)、初級文法やロシア語入門のような参考書を終えた後、次のような勉強をすることになる。

1) 入門書や会話集などで挨拶などの決まり文句を覚える。
2) 熟語や慣用句、ことわざを覚える。(ここでいう熟語はустойчивые словосочетания「安定的語結合」のことで、нарушать график + 生格の類)
3) 動詞の体の用法を十分理解する。これが理解できていないと決まり文句や、習慣的にとか一般的にこうだという不完了体の動詞しか使えず、それ以外の和文露訳ができないことになる。
4) 文章のロシア語をそのまま理解する練習をする(頭ごなし和訳の練習)
5) 壁に向かってロシア語を話すわけではないので1)や2)だけではだめで、聞き取りができるようにCDやDVDなどでロシア語を聞き、リスニングの力を高める。
だれにでも人生の時間は限られているから、プロ(ガイド、通訳、会社でロシア語を使う営業職)を目指すなら、3年間だけでも集中的に(毎日1~2時間ぐらい)ロシア語を勉強してみてはどうか。市販の参考書を使って、プロとして働けるレベルの発話能力をつけるためにどう勉強すべきかの一つの案を書いてみる。このようにして勉強すれば、ガイド(通訳案内士)試験を受験できるレベル(中級クラス)の実力はつくはずである。ロシア語の勉強に終わりはない。要はロシア語の勉強を毎日するという癖をつけることが大事である。そうすれば必ずプロとして活躍できる力がつく日が近い将来必ずやって来る。

(1年目)
会話用に特別な勉強法があるわけではなく、文法を理解し、語彙を増やすしかない。最初の勉強は露文解釈の勉強である。露文解釈の勉強を先にやるのは、ロシア語を日本語に訳すほうが、日本語をロシア語に訳すよりも一般的に簡単であるということが一つある。それと露文解釈の勉強がなぜ必要かというと、無論ロシア語→日本語への通訳の勉強のためだが、プロの通訳やガイドにとって一番重要なのは、相手の言うロシア語を100%聞き取る力である。聞き取る力というとリスニングが思い浮かぶが、単語が聞き取れても意味が分からないということは多々あるわけで、リスニング以前に内容を理解するための勉強が必要なわけである。聞き取れれば、あとは極端に言えば手振り身振りでも意思を伝えることができる場合がある。しかしほんの少しでも聞き取れないと(無論聞き返すのは一度ぐらいなら許される)、プロとしてアウトである。そのため露文読解を中心に、聞き取る力をつけることが必要である。露文解釈を通じてロシア語の論理を身につけなければならない。文章のロシア語は一般的に会話より論理的である。会話のロシア語では相手が会話の内容を理解しにくそうあれば言い換え、繰り返しが多用される(中には回りくどい話し方が癖の人もいるが)ため、それが意味の理解を助けることになるのが普通である。ところが文章では、くどくなることを避けるために繰り返しや言い換えが少ない傾向にある。つまり文章のロシア語を頭ごなし訳で理解できれば、聞きとりの一歩は踏み出せたことになる。そうなれば後はロシア語の音に慣れるだけとなる。

1) 「NHKのラジオロシア語講座テキスト」、または各社で出ているCD付きのロシア語入門書で会話がついているもの。
 その日のテキストを3回ノートに書き、その後丸暗記する。その暗記がどのくらいできたかを調べるために週末にはテキストの和訳からロシア語にする練習をする。これを半年から1年続ける。
2) 「現代ロシア語文法(城田俊、東洋書店、1993年)」、または「ロシア語文法便覧(宇多文雄、東洋書店、2009年)」
 ロシア語の勉強をしていると様々な疑問がわいてくる。この疑問がわいてこない人は語学の上達が見込めないと考えてロシア語は趣味程度にとどめておいた方がよい。その疑問の答えを知るには、こういう文法書と辞書(岩波書店か研究社の露和辞典でよい。収録語彙数は実質的に変わらない)をそろえる必要がある。これらの文法書を1日最低2ページ、できれば10ページ読む。文法書はロシア語で疑問が出てきたときにまず頼りにするものなので、一通り読んでおき、あとはその都度必要と思われるところを読み返せばよい。

(2年目)
次に挙げる参考書を1回で覚えようとはせずに、こういうことが書いてあったと頭の隅に残るぐらいで読み進めればよい。

3) 「ロシア文学鑑賞ハンドブック(中沢敦夫、群像社、2008年)」毎日10ページ読破。
4) 「ロシア語慣用句辞典(キムミネ、東洋書店、2001年)」
毎日2ページ暗記。
5) 「諺で読み解くロシア人の人と社会、ユーラシアブックレット
No. 104」(栗原成朗、東洋書店、2007年)
 小冊子ではあるが、ロシア人についての考察は深い。ことわざも500ぐらいあり、自分で必要だと感じたものは暗記する。
6) 「ロシア語の運動の動詞(原求作、水声社、2008年)」
 毎日2ページ読破。
7) 「ロシア語の体の用法(原求作、水声社、1996年)」
毎日2ページ読破。
8) 「ロシア文法の要点(原求作、水声社、1996年)」
毎日2ページ読破。

(3年目)
9) 「時事ロシア語(加藤栄一、東洋書店、2008年)」
毎日1~2ページ分の単語を暗記。
10) ロシア語の1000時間マラソン
毎日3時間ロシア語のテープ、映画、ニュースを通勤通学の合間に、意味が分からなくてもBGM感覚で聴き流す練習)を1年間する。
11) ガイド試験の準備
法学書院の過去問をやってみるなど。
 今回の課題は、
Амеpиканские пpогpаммисты очень долго не могли понять, почемy их pyсские коллеги пpи зависании Windows всё вpемя повтоpяют фpазy "твой кpолик написал" (Your Bunny Wrote) (пpим.: английский ваpиант следyет пpочитать быстpо).
設問)訳せ。オチは別に解説してもよい。

Posted by SATOH at 2009年06月25日 15:07
コメント

はじめまして。以前から愛読させていただいています。少し敷居が高いのですが、思い切って投稿します。よろしくお願いします。
(訳)
 米人プログラマーは、なぜロシア人の同僚はWINDOWSがフリーズするたびに、「あなたのうさちゃんより(Your Bunny Wrote)」と入力するのか長いことわからずにいた。(注:英語では、すぐに読んでねの意味)

オチは二通り考えました。
 1)Your Bunny Wroteは、たしかハッカーが使用して、メールを開かせようとする手の一つだったような。よって、フリーズしたPCに「早く開けよ!」とやけになっているというパターン。
 2)多分こちらかと思うのですが、Your Bunny Wroteは、Fucked into mouthと同義の罵倒語とネット検索で出てきました。真偽のほどは確認できていません。
 これだと、「くそったれ!」と打ち込んでいることになります。
-----------------------------------------------
ご理解されているように2番目のオチが正しい。ただ注の訳は、「英語を早口で読むべし」ということです。ゆっくり読むとオチのように聞こえないからです。私の訳は、ロシア人のプログラマーはウィンドウズがスタックすると、いつもYour Bunny Wroteという文句をなぜ繰り返すのかアメリカのプログラマーはとても長い間理解できなかった。
(注)英文を早口で読む事。
解説)Ёбаный в ротという最上級の悪口雑言。

Posted by hatomame at 2009年06月28日 11:27

ありがとうございました。注の訳は、5回くらい読んでやっと合点がいきました。一度思い込むと、その枠からなかなか抜けられないです。

Posted by hatomame at 2009年06月29日 09:08
コメントしてください