2008年12月17日

●新帯研 第40回

カザフスタンは「ッカザックスタン」という発音がカザフ語の発音に近く、語頭には英語でいうck(クロックclockのckで英語では語頭には来ない)である。出張でモンゴルに行ったとき、招待してくれたメーカーの事務所の世界地図には、カザフスタンのことをQazaqstanと書いていた。確かにこの方がKazakhstanより原音表記と言う観点からは近いかもしれない。
カザフ語のアルファベットはロシア語のそれを基にして作られたが、必ずしも同じではない。1940年のカザフ語の正書法では「偉大な」улыはуの上にお盆のような記号をつけ、発音は「オーラ」に近く発音する。字が似ている「毒々しい」улыはその記号なしで、発音は「ウーラ」と発音する。しかし印刷の校正の過程で、よくこのお盆の記号が消えることが多々あった。つまり、「我父であり師でもある毒々しい首領同志スターリン」という風になることがあったということである。ちょっとしたいい加減さや偶然から植字工や新聞記者が塀の中にぶち込まれることもあり得たわけで、彼らはこの文字のことを「殺し屋」と呼び恐れた。言語学者たちがこの窮境を救うために立ち上がり、уの下の部分に横に線を加える事で(¥の横棒が一本足りない感じ)、この混乱に終止符を打ったのである。今回の課題は、
Доктор слушает пациента и приговаривает:
- Хорошо, хорошо...
- Доктор, а что хорошего-то?
- Хорошо, что у меня такого нет!
設問)和訳せよ。

Posted by SATOH at 2008年12月17日 11:53
コメント

はじめまして。
大学のロシア語学科で学んでいるものです。
最近、貴著の「アネクドートに学ぶ実践ロシア語会話」を購入いたしまして、この本には随分勉強させていただきました。
折角の機会ですので、こちらの新帯研にも参加させていただければと思います。
恥ずかしながら、ロシアの大衆文化には全くの無知ですので、恥をかきつつ勉強させていただきたいです。
最後になりますが、常連の皆さま方には突然の参加をご容赦願います。


(訳)
医師が患者を診断しました。
「良かった、良かった。」
「先生、何が良かったんですか?」
「私にこんなのが無くて良かったよ。」


別にひねりが無かったので私にも問題なく訳せたと思います。
ただ気になったのが、動詞が現在形であった点です。これは過去の出来事をリアリティを持って描写しているのか、またはただの現在形なのかがわかりませんでした。
ご教授の程をお願いします。
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オチもその通りです。文章もきれいです。現在形なのは「歴史的現在」という用法で、ご理解の通りです。新帯研の第1回のコメントを参照ください。もうすぐ発売される「アネクドートに学ぶ実践ロシア語文法」で体の用法、時制の転用、人称の転用について書いています。目次や参考文献は私のサイト「ランポポー」に書いてあります。
解説)
*слушать(聴診する、聴診器をあてる)で、完了体はвыслушатьである。
*что хорошего-то?(何かいい事がありますか)-тоは強意の助詞。疑問形あるいは反語としてчто + 形容詞中性形生格(~であるものがあるか?)を使い、肯定形では、нечто новое(何か新しい事)となる。 Что нового?(何かニュースがありますか?)これから転じて、「お変わりありませんか?」という挨拶代わりに使える。
訳)医者が患者に聴診器をあてて、こう言いました。
「よかった、よかった」
「先生、何がよかったなんですか?」
「ぼくにこんなのがなくてよかった」

Posted by ユウ at 2008年12月17日 21:32

ハヤシさんにつづいて、前途有望な大学生の方が新たに参加してくれるのはうれしいですね。前途多難な私の励みになります。
ユウさん、今後もよろしくお願いします。

Posted by takahashi at 2008年12月18日 17:45
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