2008年07月21日

●新帯研 第30回

通訳をしているとロシア人から「それはこういう意味ですかな」などと、婉曲的に間違いを指摘されることがよくある。ビジネス関係のロシア人はジェントルマンが多いからか、「そんなロシア語は初めて聞いた」とか、「ロシア語ではそうは言わない」などと第三者のいる前で通訳に対して言う事はない。そういう意味で通訳やビジネスでロシア語を使っていると正しいロシア語に触れる機会は多い。前にも書いたが私が恥をかくのは黒帯どころか赤帯だというのはそういう意味である。実戦で恥を多くかいて、それを基に修行を続けていけばロシア語はきっと上達する。書いたものばかりでロシア語を勉強しても、頭の中ではすべて分かったような気になっても実戦で和文露訳が即座には出ない。一方通訳やビジネスなどで和文露訳だけやっても、ロシア語の本を読んでいかないと語彙が増えない。どちらも大切である。今回の課題は、
Одноглазый ведёт за собой группу слепых. Неожиданно он натыкается единственным глазом на сучок дерева и восклицает:
- А чёрт, всё, приехали!
- Здравствуйте, бабушка, здравствуйте, дедушка! – хором говорят слепые.
- Да нет, это я на сук напоролся, - объясняет им первый.
Слепые снова хором:
- Здравстувуйте, девушки!
設問)和訳せよ。オチを別に説明してもよい。

Posted by SATOH at 2008年07月21日 13:26
コメント

なかなかロシア語の語彙は増えません。見てわかるものは多少増えているようですが、和露の形ではなかなかロシア語はでてきません。壁に向かってロシア語で話してもさほど効果はないかもしれませんが、実戦を積む機会がないので時折やっています。

それでは回答です。
<和訳>
片目の男が盲人のグループを率いていた。思いもよらず木の枝で目を突いてしまい、叫び声をあげた。
「く、そ、な、んてこった、と、とんでもねえ、ことが、お、お、きちまった!」
「こんにちは、おばあさん!こんにちは、おじいさん!」と盲人のグループが声を合わせて言った。
「そう、じゃ、なくってさ、俺の方だよ、枝ッコに、いきなり、でくわしちまったんだよ」
盲人のグループはまた声を合わせて言った。
「こんにちは、お嬢さんたち!」

オチは、напороться на сукに「枝で怪我をする」と「メスどもに出くわす」の意味がかけてあり、приехалиに「人がやってきた」と「とんでもないことが起きた、大変なことになった」の意味がかかっているということですね。盲人のグループが片目の男の発言を誤解したということでいいのでしょうか。「Чёрт, всё」にも何かかかっているような気もしましたが・・・
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オチについてはほぼその通りなのですが、ただприехалиは「到着しました」と「不同意、戸惑い、驚き、思いがけない展開を示す発話」をかけているわけです。сукаをメスどもと訳しているのは、練り上げた訳であれば、かなりいい訳ですが、俗語をあまり知らない学習者には、「淫売、パンパン(両方とも若い人は知らないでしょうが)、売春婦」と説明した方が親切でしょう。чёрт, всёには何もかかっていないと思います。私の訳は、
片目の人が盲人のグループを引率していました。突然片目の人は唯一の目を木の枝に突き刺してしまい、こう叫びました。
「なんてこった、運のつきだ(おしまいだ)」
「右や左の奥様、旦那様」と一斉に盲人たちは言いました。
「違うんだ、錠に当たったんだ」とその人は説明しました。
盲人たちは、再び一斉に、
「右や左のお嬢様がた」

Posted by takahashi at 2008年07月27日 22:26

まだまだ状況がのめていないようです。
盲人のグループは物乞いの集団ということだったのですか。
何でまたいきなり挨拶するのかと思っていましたが、さとうさんの解説で納得しました。
приехалиは「現代ロシア はなしことば辞典」の訳語のままです。訳語からすると思いがけないことが起きた場合に使うような感じでしたが、不同意や戸惑いなどにも使うんですね。勉強になります。
どうもありがとうございました。
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革命前のロシアでは盲人は集団で物乞いをするのが普通でした。宗教上の理由もあり、乞食に施しをするのはまともな人の義務でもありました。ただ盲人ばかりでは、慣れた場所は別にして、旅に出るときには目あきの人に引率してもらわないと、目的地にたどりつけません。そういう引率者をповодырьと言いますが、現代では盲導犬собака-поводырьという言い回しで使うほうが多いでしょう。

Posted by takahashi at 2008年07月28日 11:04
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