2007年04月12日

●帯研(第74回)

ソ連時代商社のソ連室や業務部などのソ連通は、毎日プラウダなどソ連の新聞を細かく読み、細かいニュアンスを読み解くことに熱心だった。熱烈(горячо)の有無で、当局の反応をうかがったものである。今思えばおかしくもある。当時の新聞は政治用語が主で理解はしやすかったが、口語との乖離にはほとんど注意を払わなかったため、われわれ外国人のロシア語学習者が今でも泣きを見るはめになった。
最近の日本におけるロシア関係の著作を読むと情緒的記述が目立つと思うのは私だけだろうか?もっと具体例や事実を積み重ねた上で、こう思うと言わなければロシア側も納得しないだろう。第二次世界大戦末期の満州でのロシア軍の残虐行為(私の父もシベリア抑留組であるし)を言い立てれば、私の経験では、ロシア側はシベリア出兵時の日本軍の残虐行為や南京大虐殺などはどうなのだということになる。事実は事実として伝えることは重要だが、建設的なことも述べる必要があるのではないか。例えば私の父も、ロスケは嫌いで死ぬまでロシアに行くことはなかったが(私がソ連に駐在していたのでチャンスはあった)、シベリアではロシアの女性にはよくしてもらったと言っていた。次の小話は1934年のキーロフ暗殺にからんでのもの。巷ではスターリンが手を下したという噂が今でも根強いが、女房をキーロフに寝取られ嫉妬に狂った男の単独犯行のようである。ただスターリンがこの事件を政敵排除に利用したのも事実である。キーロフもスターリン崇拝者であり、レニングラード市やその周辺の州ではともかく、スターリンのように国政をどうこうするような器量はなかったようである。また下記のベリヤのセリフについては、彼が言ったとは思われないが、ベリヤなら言いかねないということらしい。それが小話の一つの役割でもあろう。
Сталин выступает:
- Товарищи! Вчера убили тов. Кирова...
- Кого убили?
- Кого убили, кого убили... Скажите им, товарищ Берия.
- Кого надо, того и убили.
設問1)和訳せよ。

Posted by SATOH at 2007年04月12日 10:23
コメント

確かにニュース素材の方が意味は取りやすいですね。日本語でも情報を入手できる分、本当にロシア語の構文解析ができて読めたのかはっきりしない場合が多いです。なんとなくセンスグループをつなげて読めた気持ちになってしまうのは戒めたいところです。

回答です。
<和訳>
スターリンが発言した。
「同志諸君! 昨日、同志キーロフが殺された・・」
「誰が殺されたのですか」
「誰が、誰が殺されたか、だと・・・教えてやってくれ、同志ベリヤ」
「その必要があったものが、殺されたのだ」

4行目のКого убили, кого убили...と繰り返し続くところは、質問者に対するスターリンの苛立ちを示していると取っていいのでしょうか。
5行目はКого надо (убить), того и убили.と取りました。Когоの関係代名詞用法、иは強調と解釈しました。
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その通りです。今回は簡単すぎましたが、こういうジャンル(政治小話)の紹介といったところです。私の訳は、
スターリンが演説で、
「同志諸君、昨日同志キーロフが殺された」
「だれが殺されたですって?」
「誰が殺されたか、誰がって、同志ベリヤ、答えてくれたまえ」
「殺らねばならぬ人が殺られたんです」

Posted by takahashi at 2007年04月15日 10:12

こわい話ですね。やはり為政者は定期的に代変わるのがいいですね。

Posted by メイ at 2007年04月16日 18:55
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